「測る医療」の普及でウエアラブル医療機器の可能性が広がる【2025年の医療を予想する】#3
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月1日 9時26分
血糖値を連続的にモニターしてくれる(C)iStock
【2025年の医療を予想する】#3
医療分野へのウエアラブルの利用が進んでいます。代表的なものは、「非観血的血糖値測定装置」と「パッチ式インスリンポンプ」です。
以前は、血糖値の測定には血液採取が必要でしたが、現在は非観血的血糖値測定装置のような血液を必要としない測定装置が広く普及しています。小型軽量の装置を、上腕か腹部に貼り付けるだけで、血糖値を連続的にモニターしてくれます。データはスマートフォンに送られて、アプリで見ることができますし、アラーム情報を、主治医や家族に自動的に送ってもくれます。
パッチ式インスリンポンプは、インスリンを入れた小型装置で、腹部などに貼り付けます。その際、注射針を皮膚に刺す必要がありますが、痛みはほとんどありません。利用者が自身の血糖値の変化に応じて、リモコンを操作してインスリンの自己注射を行う装置です。
これら2つの装置を組み合わせて、完全自動でインスリンを注射することができるようになりました。測定装置から送られてくるデータをもとに、インスリンの必要量をアプリが計算して、ポンプに指令を発するという仕組みです。すでにアメリカで普及が進んでおり、日本でも2023年に承認されました。
「ホルター心電計」も進化しています。いつ生じるか分からない不整脈を捉えるために、携帯式の心電図を24時間ないし数日間も付けっぱなしにするという検査ですが、うっとうしいしかさ張るしで嫌がる患者も少なくありません。それがいまでは、USBメモリーを二回りほど小さくしたような、超小型心電計が実用化されています。胸の皮膚をほんの少し切開して、皮下に埋め込むのです。小さくても電源を搭載していて、なんと半年から1年以上も心電図を取り続けることができます。データは、専用の装置を皮膚の上から押し当てることで、読み出すことができます。
「スマートウォッチ」なども進化してきています。血圧や脈拍、簡単な心電図が取れる機種が登場しています。信頼性は低いものの、血糖値を測れる機種も出始めていますし、急速に改良が進んでいくはずです。
スマートウォッチからのデータは、スマホ経由でインターネット上のサーバーに送られ、AIが自動診断してくれるようになるでしょう。それによって病気の予防や早期発見が可能になり、利用者はますます健康になれるというわけです。
すでに必要な要素技術は出揃っています。情報セキュリティや法的な問題(薬機法など)さえクリアできれば、一気に進んでいくのは間違いありません。
(永田宏/長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授)
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