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病気の原因となる特定分子を攻撃する「分子標的薬」が飛躍する【2025年の医療を予想する】#5

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月3日 9時26分

病気の原因となる特定分子を攻撃する「分子標的薬」が飛躍する【2025年の医療を予想する】#5

アルツハイマー病治療の新薬「レカネマブ」の米国での製品イメージ(エーザイ提供)

【2025年の医療を予想する】#5

 バイオ医薬が絶好調です。いまや全世界の医薬品市場の半分(金額ベース)を占めると言われています。なかでも「分子標的薬」が大いに売上を伸ばしています。主成分はモノクローナル抗体と呼ばれるタンパクで、病気の原因になっている特定の分子を攻撃するように設計されています。

 主にがんの治療薬として、多くの種類が用意されています。ノーベル賞で有名になった免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボ(小野薬品)はそのなかの代表格です。オプジーボだけでなく、すでに6種類の免疫チェックポイント阻害剤が承認され、がん患者に広く使われています。

 他にもがん細胞に血液を送る血管を作らせないようにするものや、細胞増殖を抑えるものなど、さまざまな分子標的薬が使われています。最近、末期がんでも元気な人が増えていますが、その多くが分子標的薬のお陰と言っていいでしょう。

 分子標的薬のターゲットは、がんに限りません。アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、クローン病、喘息、多発性硬化症、ある種の貧血や血小板減少症などの治療でも、大きな効果を発揮しています。

 2023年にアメリカと日本で承認された、アルツハイマー病治療薬のレカネマブ(商品名:レケンビ)も分子標的薬です。早期の患者に、点滴を2週間に1回のペースで1年半続けると、病気の進行を半年遅らせることができるとされています。

 分子標的薬の可能性はまだまだ広がるはずですし、現在も治験中のものが多数控えていますから、2025年にはさらに新しい薬が上市されるてくるはずです。

  ただし分子標的薬は、いずれもかなり高価です。1本で数十万円もする注射薬も珍しくありません。それを毎月1本打てば、年間で数百万円に達します。安いほうでも1本数万円はします。

 もちろん高額療養費制度が使えるため、患者の負担はずっと少なくて済みます。しかし医療財政には大きな負担ですし、最終的には現役世代が背負うことになります。ただそれも限界に近づきつつあります。医療費の負担をどう分配するかについて、本気で検討すべき時期に来ているのは間違いありません。

(永田宏/長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授)

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