HIVの新規感染報告件数…25府県が昨年1年間の累積を上回る
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月8日 9時26分
(C)日刊ゲンダイ
第51週時点での「後天性免疫不全症候群」(HIV)の新規届け出の全国総数は昨年同期比で44件多い966件。1日2.8人ペースで報告されている計算だ。26府県が前年のペースを上回っていて、うち25府県が昨年1年間の累積件数を既に上回っている。
この数字をエイズを発症する前のHIV感染者数と思う人もいるかもしれないが間違いだ。ここで言う「後天性免疫不全症候群」とはHIVの新規感染者とAIDSの新規発症者の合計数を指す。つまり、公表された数字のなかには検査と同時に「いきなりエイズ」を告げられる人が含まれているということだ。性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」の尾上泰彦院長が言う。
「HIVは感染してもすぐにエイズを発症するわけではありません。通常、急性期、無症候性キャリア期、エイズ期を経て発症します。なので、ここ数年思い当たるような性交渉がなくても、若い頃にさんざん遊んだという人は検査と同時にエイズ発症を告げられる可能性があります」
急性期は感染から2~4週間を指す。体内でHIVが増殖し、白血球のひとつでウイルスや細菌を攻撃する司令塔役であるCD4陽性リンパ球が次々と破壊されていく。
「このとき発熱やのどの痛みといったインフルエンザや風邪のような症状があらわる。あるいは筋肉痛や皮疹などが出る場合があります。しかし、数日か数週間で症状は自然と消失します」(尾上院長)
その後何も症状のない無症候性キャリア期が続く。その期間は人によって異なり数年から15年以上続くこともある。しかし、この間も体内ではHIVが増殖を続けていてCD4陽性リンパ球の減少による免疫力低下が続いていく。
「人によっては寝汗や長期の下痢、体重減少などの症状が出てきて、帯状疱疹や口腔内カンジダ症などの病気にかかりやすくなります。顔に水いぼが急に多数でてきたという中高年は要注意です」
エイズ期になると健康な人なら感染しないような病原体による日和見感染症などさまざまな病気にかかるようなる。
「エイズ発症は、23の指標となる代表的な疾患を発症した時点で診断されます。国内発症者で多いのはニューモシスティス肺炎、カンジダ症でどちらも真菌症です。さらにサイトメガロウイルス感染症、HIV消耗性症候群なども目立ちます」
しかし、かつては不治の病だったエイズもいまは発症前のHIV感染症の時期に適切な治療を始めれば95%以上は発症を抑えられ、他人への感染も防ぐことができるようになっている。
HIV検査は血液検査で、保健所であれば匿名、無料で受けられる。気になる人はまず検査だ。
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