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箱根駅伝の「産学協同」…大学生が広告塔になっていいのか?「線引き」は明確にすべき

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月11日 9時26分

箱根駅伝の「産学協同」…大学生が広告塔になっていいのか?「線引き」は明確にすべき

6区を区間記録で走った青学・野村昭夢はアンカーの小河原陽琉(写真)と同じ3本線のシューズをテレビカメラの前に…(C)日刊ゲンダイ

【スポーツ時々放談】

 1976年のモントリオール五輪で1万メートルを制したのはフィンランドのラッセ・ビレンだった。27分40秒でゴールしたビレンは、履いていたシューズを高々と掲げて場内を1周した。オニツカタイガー、現在のアシックスの靴だ。

 8年後のロサンゼルス五輪、日本が期待した男子マラソンを制したのはポルトガルのカルロス・ロペスだった。炎天下を2時間9分21秒で独走した37歳は、ナイキのシューズをまぶしい西海岸の陽光にかざした。ロペスはモントリオールのラスト1周でビレンに抜かれた。カメラの向こうの宿敵へのアピール……彼らはステートアマでありプロランナーだった。

 2025年の箱根駅伝の復路6区、青学大の野村昭夢は区間記録の快走で連覇を固めると、中継点のテレビカメラにシューズを差し出した。アディダスの3本線の上には仲間からのメッセージが書かれていた。

 箱根駅伝の101回という長い歴史のどこかで、この行為はアマチュア規定違反として失格処分になっていただろう。これを宣伝行為とするなら、白バイ先導で公道を管理する警視庁も神奈川県警も黙認しなかったはずだ。それはそれほど遠い時代ではないが、いまはすてきなエピソードとして語られる……。野村はMVP、金栗杯をダブル受賞した。

 スポーツ紙の箱根特集には選手のシューズの銘柄まで入っている。胸のスポンサー名は大きくなり、暮れには学生ランナーを使った広告が躍る。日本はメーカーの国だ。アマチュアリズムを盾に産学協同が良くないなどとは言わないが、大学スポーツがどこまで許すかの線引きは明確にした方がいい。

 これは1987年に始まった日本テレビによる全国放映の影響に他ならない。それ以前、箱根駅伝は西日本ではほとんど知られていなかった。完全中継の功労者だったディレクターの坂田信久氏はスポーツマインドを備えた人で「テレビが箱根駅伝を変えてはいけない」と話していた。が、こう付け足した。

「変わるんですけどね」

 そこを仕切るのが陸連なり学連、スポーツ庁の仕事だろう。それができないなら不要な機関だ。挨拶など聞きたくもない。

 強い青学大の理由は単純で、お化け番組になった箱根を頂点に強化しているからだ。その原メソッドに対し、「世界を目指す」(駒大・大八木総監督)、「トラックのスピードを磨く年代に箱根が存在する位置付け」(中大・藤原監督)と、箱根観は大学それぞれだ。ただ、11年間に8度の総合優勝のチームからオリンピック、世界選手権の代表が一人も出ていないことにメディアは触れようとしない……劣化ではないだろうか。

(武田薫/スポーツライター)

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