『シンペイ』で映画初主演 中村橋之助さん「歌舞伎役者」としての節目を振り返る【その日その瞬間】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月12日 9時26分
2人が立て続けに亡くなったのは高校にかけてのころのことです。大人の役をやるようになって、これから本格的にやっていくというタイミングでした。父とは祖父がお稽古してやりたいと思えるくらいの役者にならなきゃと、ずっと勉強を重ねていましたからね。本当に大きな出来事でした。
「シンペイ」は作曲家・中山晋平さんを描いた映画です。中山晋平さんは存じ上げていませんでしたが、お話をいただいた時はうれしかったですね。歌舞伎だけでなく、演劇や映画にもすごく興味がありましたから。問題は撮影期間2カ月の「スケジュールが取れるかどうか」でしたが、それもクリアできた。
初めての映画で主役ですが、そのプレッシャーはそれほどなかったですね。僕自身が持っているものを惜しみなく、全力で向かっていくつもりでしたから。ただ、映画で必要とされることに、対応できるかどうかという不安はありました。神山監督には、映画に慣れていないことがよさになって出ているとおっしゃっていただき、心強かったです。
福之助、歌之助と最強の3兄弟になりたい
「シンペイ」で印象的なのは緒形直人さんとのシーン。緒形さんの役は晋平が書生として入る島村抱月です。
撮影は何回もテストしてから本番の繰り返し。本番もカット割りのために何回も同じお芝居をするから、ガス欠状態になることが結構あった。でも、緒形さんはそのカットがどういうアングルからどう撮りたいか理解していて、調整しながら演じていた。それは歌舞伎にはないものです。
結果的に緒形さんはキャラが立って、メチャクチャすてきな抱月になっていました。勉強させていただきました。
奥さんの役を演じたのは志田未来さんです。奥さんは晋平よりも早く亡くなるのですが、病床でお別れをする悲しいシーンは無理なく演技できたと思っています。
これからも映画やテレビの仕事を何でもやっていきたいです。歌舞伎役者としては福之助、歌之助と3人で成駒屋の戦力となり、必要とされる役者になって、一門を大きくしていきたい。ゆくゆくは3人が主役をやれる最強の3兄弟になりたいですね。
(聞き手=峯田淳)
◆映画「シンペイ~歌こそすべて」 明治生まれ、大正、昭和に生きた作曲家・中山晋平の物語。野口雨情や西條八十、島村抱月らとの交流、「シャボン玉」「東京行進曲」「東京音頭」「船頭小唄」などの童謡、歌謡曲などを取り上げながら激動の時代を描いている。
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