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ドラマの撮影中は紙パンツを…俳優・橋爪淳さん大腸がんとの闘いを語る

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月14日 9時26分

 1週間ぐらいして体に刺さっていた管が全部抜けたときの解放感ったらなかったですね(笑)。

 その後、ベッドの手すりにつかまって立つだけでも大変な時期を乗り越え、入院から35日で退院しました。先生も看護師さんもみんなすてきな人で、なぜかわからないんですけど、ありがたくっていつも泣いていました。「何でこんな私にこんなに世話を焼いてくれるんだ」って……。本当にいつも(笑)。

 実はリンパにもちょっとがんが飛んでいて、全部は取り切れなかったということで、退院後の3月中旬から9月下旬まで錠剤の抗がん剤を服用しました。1日3回、6時間おきなので、毎日朝6時起きで飲んでいました。

 副作用はほとんどなくて、強いて言えば髪の毛がちょっとだけ薄くなったかな。年齢のせいと言われればその通りですが、薬が体に合っていたみたいです。

■今は“修業”を終えたすがすがしさがある

 定期的に検診には行っていますが、今はまったく生活に支障がなく、とても元気です。狭心症の方は、1カ所少し詰まっているみたいなのでコレステロールを下げる薬を飲んでいます。

 手術が怖くて検査に行かない人が多いと聞きます。自分もまさにそうでした。でも、あんなにひどい状態でも治るので、怖がらずになるべく早く受診するといいと思います。もともとネガティブな性格ですが、今回の手術は怖くありませんでした。たぶん10年前から演技を習い始めたからだと思っています。

 それまでの自分は、誰かに何かを教わるのが嫌いで、独学で俳優をやってました。

 でも50歳を過ぎてそれでは通用しないとわかって、師匠について勉強しました。演技をするということは、「我」を離して役に集中することです。そこに橋爪淳という「我」が出ちゃうと、役としての存在が危うくなる。

 手術に対しても「これは演技を鍛え直す修業」だと思うことにして、「我」を離すことができたので、検査や治療にワクワクできた気がします。もちろんつらいことはつらかったんですけどね。

 今となっては、修業を終えたすがすがしさがあります。実際、ずっと昔からの便秘症が治って、まるで小学生の頃のような便が出るようになったんです。本当に感動しました。あんなに美しい便を見たことがなかったので拝みましたよ(笑)。ついでに言うと痔も治りました(笑)。

 世の中には手術をしなきゃ治らない病気があります。手術を受けるなら、医者を選ぶことが大事。そして思い切って手術して治すという覚悟を持っていないと治らない。そんな気がしました。

(聞き手=松永詠美子)

▽橋爪淳(はしづめ・じゅん)1960年、東京都出身。82年に映画「海峡」で俳優デビュー。2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」の藤原頼忠役を務めた。「まなびのスペーススタジオファジオス『非・演技塾』」の講師も務める。1月22日に東京オペラシティで上演される舞台「THE GHOST」に出演する。

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