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心房細動が心配な人はアップルウオッチで心電図を 【心臓外科医が教える患者のための基礎知識】(1)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月15日 9時26分

心房細動が心配な人はアップルウオッチで心電図を 【心臓外科医が教える患者のための基礎知識】(1)

心房細動は誰にでも起こる可能性がある

 国家権力を担う警察、検察、裁判所、軍隊のことを「暴力装置」と呼ぶことがあります。国家が社会の秩序を維持するための「必要悪」なのですが、庶民にとっては「いつ何をされるかわからない」怖い存在です。

 さて、医者も同じく「権力」を持っています。医師免許があるから、とも言えますが「知識」があるからです。「末期がんですね。正月はありませんよ。でも、今すぐ死ぬわけじゃないからお帰りの際は車にひかれないように」──こんな宣告を受けたと激怒して電話してきた弁護士さんがいました。「識っている人」は「知らない人」にとって「権力者」なのです。

 皆さんの頭の中でも「知識」が権力者としてふるまうのではないでしょうか。「あのワクチンはインチキだ! 絶対接種しないぞ」。その人が「正しい」と判断した「知識」が「信念」となり、行動を決定している人をよく見かけます。

 たとえば、「心臓の手術って、一度心臓を体の外に取り出すんですよね?」と聞いてくる患者さんがいました。誰が吹き込んだのか知りませんが、これは正しくありません。「信念」にまでたどり着いた「でたらめ」を正しい方向に説得することは困難です。情報があふれる今日、頭の中には「知識」と呼ばれるさまざまな「権力者」がいて皆さんを支配していることでしょう。

 今回は心房細動について解説します。誰にでも突然起こる惨事です。脱水状態、アルコール、睡眠不足など、劣悪な環境で心臓を酷使すると心臓が「キレてしまう」のです。心臓の一部である心房という部屋がプルプル震えてしまい、心室がいつのタイミングで収縮していいかわからなくなる、という状態です。

 この時、心臓の中で血液の塊ができて、それが脳の動脈に流れていけば血管がつまってしまい、脳梗塞になってしまいます。手足の麻痺が残ることもありますし、そのまま死んでしまうかも知れません。心房細動が突然起こっても、しばらくして心臓は機嫌を直してくれて正常に戻ることも多いのですが、それは「心臓君」しだい。

 今この瞬間にしっかりと働き続けている皆さんの心臓が急に止まろうが、それは「心臓様」の勝手なのです。心臓が心房細動の状態になるとどんな症状がでるかって? ズバリ言って、人さまざま。「なんだか胸のあたりが変な具合だぞ! 心房細動かな?」と思ったら心電図をとること。しかも、しっかりと波形を記録する必要があります。これしかありません。

 今は病院なんかに行かなくても即座に心電図の波形が記録できる方法があります。それはアップルのスマートウオッチです。「どんな症状なんですか?」「どうしたら防げるんですか?」──そんな質問する暇があるなら、表参道に行ってスマートウオッチを買いなさい!

(南渕明宏/昭和大教授)

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