「霜降り明星」せいや 高校時代の壮絶いじめを乗り越え、テレビ界のユーティリティープレーヤーに(ラリー遠田/お笑い評論家)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月18日 9時26分
「霜降り明星」せいや(C)日刊ゲンダイ
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2018年に「M-1グランプリ」で優勝した霜降り明星は「第7世代」と呼ばれた同世代の若手芸人のトップランナーであり、そのブームを牽引する存在だった。
第7世代ブームが落ち着いた後も、彼らの勢いが衰えることはなかった。キャリアを重ねてその実力にも磨きがかかり、さらに活躍の場を増やしている。昨年はチョコレートプラネット、ハナコとともに「FNS27時間テレビ」の総合司会という大役も務めた。
コンビとしての活動のかたわら、彼らは個々人でも精力的に活動している。ツッコミ担当の粗品は、YouTubeで先輩芸人を名指しで批判したり、ギャンブル企画で大金をつぎ込んだりして、新時代のヒールキャラとして熱狂的な支持を受けている。
そんな過激路線をひた走る粗品とは対照的に、ボケ担当のせいやはテレビを軸にして健全なタレントとして活動を行っている。どんな状況にも対応できる器用さがある上に、愛嬌があって上の世代に愛され、下の世代に慕われるせいやは、テレビ界のユーティリティープレーヤーとして引っ張りだこになっている。
昨年11月にそんな彼の半自伝的小説「人生を変えたコント」(ワニブックス)が出版された。発売直後の時点ですでに発行部数10万部を超えていて、大ヒットを記録している。せいや自身が高校時代に壮絶ないじめに遭いながらも、学校行事で自分が作ったコントを演じて笑わせることで、それを乗り越えていった経験がつづられている。
彼がいじめを克服したエピソードは、テレビなどでも断片的には語られていた。本人はその話の内容を「いつか本にしたい」と意気込んでいた。それが今回ついに実現したことになる。
壮絶ないじめに遭っていた少年が、周囲の人々を巻き込んでいき、笑いの力で逆境をはね返していく。あまりにも正しく、美しく、まぶしい。その少年が、のちにお笑いの世界でどんどんのし上がってスターになっていくというのも、あまりにできすぎた話だ。
明るく楽しい芸風のせいやの根底にあるのは、何があっても負けずに自分らしい生き方を貫く不屈の闘志である。その思いの強さがある限り、今後もせいやの芸人としての地位が揺らぐことはないだろう。(つづく)
(ラリー遠田/お笑い評論家)
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