血圧は「下」にも気を付けたい…90以上は治療対象
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月18日 9時26分
下の血圧が高い場合、生活習慣に問題がある可能性が高い
「血圧が140になっちゃったから治療を受けないと」「130を超えたら気を付けたほうがいい」──。血圧というと、こうした数値が持ち出されるケースが多い。いずれも「収縮期血圧」、いわゆる「上の血圧」の数値だ。高血圧症の診断ではもちろん重要な数値だが、血圧には「拡張期血圧」=「下の血圧」もあり、そちらにも注意する必要がある。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信氏に聞いた。
◇ ◇ ◇
日本では高血圧症の患者は約4300万人と推計されている。日本高血圧学会では「収縮期血圧140㎜Hg以上あるいは拡張期血圧90㎜Hg以上(診察時)」を高血圧症と定めていて、脳卒中や心筋梗塞といった脳血管や心臓血管の病気の最大の危険因子であることから、すぐに治療が行われる。
血圧とは、血流が血管の壁を押す圧力のことで、心臓が収縮して全身に送り出す血液量(心拍出量)と、血液の受け皿の末梢血管の抵抗力(末梢血管抵抗)を掛け合わせたものである。
「心臓が全身に送り出した血液は、最終的に肺を経由して再び心臓に戻ります。心臓が収縮して血液を送り出す際に血管にかかる圧力の最高値を『収縮期血圧(上の血圧)』、戻ってきた血液を一時的にため込むために心臓が拡張して血液を送り出していない状態で血管にかかる圧力の最低値を『拡張期血圧(下の血圧)』と呼びます。ですから、心臓が1回拍動するたびに上の血圧と下の血圧が必ず生じることになります」
一般的に、収縮期血圧は加齢や生活習慣により血管の弾力性が失われて血液の流れが悪くなることが要因で上昇し、数値が高いと動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳卒中などの脳・心臓血管病のリスクをアップさせるといわれている。「上」を注意する人が大多数なのもそのためだろう。
一方、拡張期血圧は心臓から遠い末梢血管が硬くなって、血液が流れにくくなることで上昇する。
「下」の数値は当然「上」の数値ほど高くはならないうえ、「下」だけが高い場合は、末梢血管は動脈硬化が進んでいても、心臓から近い太い血管はまだ弾力性が保たれている状態といえるため、あまり気にしていない人が多い。
■生活習慣の改善が有効
「しかし、上の血圧は問題ない範囲でも下の血圧が高い人は、心臓に近い太い血管では動脈硬化がそこまで進んでいないものの、手足などの細い血管=末梢血管には動脈硬化が現れてきている可能性が高いと考えられます。特に肥満や糖尿病のある人はこのようなリスクが高い。血管の先端が詰まっているような状態といえるので、心臓が全身に血液を送り込む際は、それだけ大きな力=圧力が必要になり、心臓に負担がかかることになります。放置すればそれだけ心臓の疲弊は大きくなるのです。また、下の血圧が高い人は、ストレスがかかるなどして血圧が上昇したときに上の血圧が一気に急上昇しやすくなり、トラブルが起こるリスクがアップしてしまいます」
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