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「トランプ劇場」第2幕…軍事力で領土を脅し取る歴史の亡霊「帝国主義」がよみがえる【トランプ2.0始動 暴走どこまで #1/半沢隆実】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月20日 11時12分

「トランプ劇場」第2幕…軍事力で領土を脅し取る歴史の亡霊「帝国主義」がよみがえる【トランプ2.0始動 暴走どこまで #1/半沢隆実】

いよいよ就任式(C)ロイター

【トランプ2.0始動 暴走どこまで】#1

「トランプ劇場」第2幕が、20日の米大統領就任式で始まる。就任前に突然、他国領土を要求し世界の“株式会社化”を夢見る。国内では反対勢力への復讐を準備中だ。ドナルド・トランプの暴走はどこへ向かうのか。

  ◇  ◇  ◇

 トランプ外交による波乱は予想されてきた。だが、就任を約2週間後に控えた7日の記者会見は、常軌を逸していた。武力をちらつかせ「グリーンランドが欲しい」と言い出したのだ。

 北極に近い世界最大の島、グリーンランドは、れっきとしたデンマーク自治領だ。その領土をトランプは「売れ」と要求。デンマークが拒否すれば、高関税導入に加え、軍による圧力を「排除しない」と明言した。その目は真剣だった。

 虚実取り交ぜ相手を混乱させて妥協を迫るのは彼の常套手段だ。本当は島の豊富な地下資源開発権や、地球温暖化で海路が開かれた北極海の支配、または、島にある米軍基地の費用負担が目的かもしれない。

 敵対するロシアに近い要衝の島に米国が食指を動かしたのは初めてではない。

 冷戦期の1946年には、1億ドル相当の金塊と交換する秘密提案をデンマークに行った。第1次トランプ政権も買収に意欲を示したが、「ばかげた提案」と一蹴された。

 今回は本気度が高い。グリーンランドでは4月上旬までに自治政府議会選が予定され、独立が主要争点だ。豊かな米国の一部になれという誘いは、独立派を有利にするという打算が成り立つ。

 事実上の選挙介入に加え、トランプは買収目的について「米国の安全保障に必要だからだ」と言い放った。自国利益のため、北大西洋条約機構(NATO)同盟国にも容赦なく主権放棄を迫った。軍事力で領土を脅し取る歴史の亡霊、帝国主義がよみがえろうとしているのだ。

 デンマークが加盟する欧州連合(EU)主要国のフランスは「EU(加盟国)領土への攻撃を容認しない」と警戒をあらわに。ドイツも「国境不可侵の原則は平和秩序の基礎だ」と、ウクライナに侵攻したロシアと米国を重ねて痛烈に批判した。

■ばかげた要求にはNOを突きつけないと

「パナマ運河を返せ」「カナダを米国51番目の州に」――。一連のトランプ発言で浮かぶのは、自国利益のために、必要なら他国に介入する極めて利己的で厄介な孤立主義を歩む米国の姿だ。

 ばかげた要求にはNOを突きつけないと、暴走は加速する。アジア外交でも中国抑止に夢中になるあまり「米国の安全上必要だから沖縄を再占領する」と言い出しかねない人物であることを、日本は覚悟すべきだ。(敬称略=つづく)

▽半沢隆実(はんざわ・たかみ) 1988年共同通信社入社。社会部記者を経てカイロ特派員、パレスチナ紛争、イラク戦争、アフガニスタンなどを取材。ロサンゼルス、ロンドン、ワシントンの各支局長を経て特別編集委員。

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