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大リーグ殿堂入りの基準は時代とともに変わる 背景には指標開発による分析の進化も(鈴村裕輔)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月22日 9時26分

大リーグ殿堂入りの基準は時代とともに変わる 背景には指標開発による分析の進化も(鈴村裕輔)

メジャーの野球殿堂入りが確実視されるイチロー(C)共同通信社

【メジャーリーグ通信】

 大リーグにおいて、打者であれば3000安打や500本塁打、投手の場合は300勝を達成すれば、資格初年か否かを別にして、多くの場合、野球殿堂で顕彰されている。

 一方、時代の推移に伴う野球に対する人々の見方の変化も、殿堂への選出に求められる基準や対象となる選手の層を変えている。

 例えば、2002年に殿堂入りしたオジー・スミスである。シーズン本塁打は6本が最高と打撃での活躍は乏しかったものの、カージナルス時代の監督であったホワイティ・ハーゾックが「毎シーズン何勝か上積みしてくれた」とスミスの遊撃の守備を高く評価したため、守備だけと思われていた選手への見方そのものが好転する。

 殿堂入りの候補から外れた選手らを審議するベテランズ委員会が、1994年にフィル・リズート(元ヤンキースの遊撃手)を選出したのも、守備の貢献度の高さが評価された結果だった。

 あるいは、各種の指標の開発による野球の分析の進化も、選手の評価に新たな尺度をもたらしている。

 出塁率と長打率を合計したOPSを、球場の特性などを加味したパークファクターで調整したOPS+は100でリーグの平均となり、他のシーズンや通算記録の比較を可能にするための指標として考案された。その結果、異なる時代の選手の成績を相対化して比較できるようになった。

 2024年12月にベテランズ委員会が選出したディック・アレン(元フィリーズ、ホワイトソックスなど)は、1970年代を代表する強打者の一人だった。

 投手が優位の時代であったために大リーグ15年間の通算成績は1848安打、351本塁打、1119打点と傑出したものではなかったが、通算のOPS+は24年シーズンの終了時点で歴代25位だった。

 アレンより上位の24人のうち、現役選手4人を除けば15人が殿堂入りしていただけに、選出も間近と考えられていた。今回の選出は現代の指標が過去の成績の価値を正当に評価した典型例ということになるだろう。

 また、大リーグ機構によるニグロ・リーグの記録の整備事業の進展は、24年5月に大リーグの公式データベースに同リーグの数値が反映されたことで一つの区切りを迎えた。

 現在、機構はニグロ・リーグの再評価を進めていることもあり、今後はデータベースを活用した同リーグの選手の殿堂での顕彰が活発になることが予想される。

 野球人の最高の栄誉は、その名前と肖像が野球殿堂に掲額されることである。これまで基準がさまざまに変化してきただけに、今後も思いがけない選手が栄誉に浴することになるだろう。

(鈴村裕輔/野球文化学会会長・名城大准教授)

  ◇  ◇  ◇

 ところで、メジャーの野球殿堂入りが確実視されるイチローと大谷翔平はどちらも天才として知られるが、両者には「決定的な差異」がある。いったいどういうことか。何が、どう違うのか。

●関連記事【もっと読む】…では、それらについて詳しく報じている。

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