HPVワクチンの無料接種期間が1年延長される対象者の条件は?【クスリ社会を正しく暮らす】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月22日 9時26分
「キャッチアップ接種」対象者は25年3月末までに最低1回の接種を
【クスリ社会を正しく暮らす】
ヒトパピローマウイルス(HPV)の予防接種を公費(無料)で受けられる「キャッチアップ接種」について、2026(令和8)年3月まで1年間の延長が決定しました。ただし、25年3月末までに最低1回の接種を受けていることが条件です。対象者は、誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日の10~20代の女性です。
子宮頚がんのほとんどは、HPV感染が原因であることがわかっています。このHPVは性交渉により男性にも女性にも感染し、このうち一部の女性は前がん病変を経て、数年以上をかけて子宮頚がんに進行します。国内では、毎年約1万人の女性が子宮頚がんにかかり、約3000人が死亡しています。感染してからがんになるまでには10年以上経過する場合が多く、10代でHPVに感染すると30歳前後でがんになるリスクがあるのです。妊娠の際にがんが発見されて出産を諦めなければならない事例なども多く報告されています。
HPVにはワクチンがあり、ワクチンを接種することで、多くのHPV感染を予防することができます。ただ、ワクチンはすでに今感染しているHPVを排除したり、子宮頚部のがん細胞を治す効果はなく、あくまで接種後のHPV感染を防ぐものです。ですから、HPVに初感染するまでにいかに早くワクチンを接種するかが重要だと考えられます。
日本におけるHPVワクチンは、13年4月に定期接種化されたものの、わずか2カ月後に複数の有害事象が報告されたことを受けて国は積極的な勧奨を取りやめています。それらの有害事象は、HPVワクチンとの因果関係が不明とされているにもかかわらず、多くのメディアがニュースとして取り上げ広く報道しました。結果的に同ワクチンの接種率は1%未満に落ち込み、現在でもその低迷状態は続いています。
しかし、厚生労働省は最新の知見を踏まえ、ワクチンの安全性について特段の懸念が認められないことなどを確認し、22年4月から積極的勧奨を再開しています。「キャッチアップ接種」対象となる10~20代の女性には、今年3月末までに間に合うようにこれらの情報を広く知っていただきたいと思います。
(荒川隆之/薬剤師)
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