バッテリィズのボケ担当エースの「おバカ」パワーは常に受け手の想像を超えてくる(ラリー遠田/お笑い評論家)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月23日 9時26分
バッテリィズのエース(左)と寺家(C)日刊ゲンダイ
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昨年末に行われた漫才コンテスト「M-1グランプリ2024」の主役となったのは、前人未到の連覇を達成した令和ロマンである。しかし、優勝こそ逃したものの、彼らに負けないぐらいの活躍を見せて、その後も順調に仕事を増やしているのが、準優勝したバッテリィズだ。
バッテリィズは、エースと寺家の2人組。草野球でピッチャーとキャッチャーのバッテリーを実際に組んでいたことが芸名の由来である。
彼らの漫才の売りはボケ担当のエースの明るく無邪気な「おバカキャラ」である。漫才の中では、知識がないことが原因で次々にピントが外れた受け答えをしてしまうのだが、その外れ方が絶妙で、常に受け手の想像を超えてくる。
たとえば、決勝で見せた「世界遺産」をテーマにした漫才では、スペインのサグラダ・ファミリアに行くことを勧められ、140年も建設中でまだ完成していないと知ると「なんで俺、スペインまで行って工事現場行かなあかんねん。人足りてないから働かそうとしてるやろ!」と怒り始めた。
その後も、タージ・マハルについて「なんで俺、知らないやつの墓参り行かなあかんねん!」と不満を示し、ピラミッドも墓であると聞かされると「もうええって! 行かへんって墓参りは!」とあきれてみせた。
しかも、彼はただの無知なおバカキャラではなく、その裏に人間的な優しさがにじみ出ていることもある。漫才の中で、昔の偉人の墓が大きいのはそれだけ偉大だからだという話をされて、自分の祖父の墓が小さいと言っていたエースは「俺のおじいちゃんも、おもちゃいっぱい買ってくれたから! 俺のおじいちゃんも偉大やから!」と返した。その無邪気な一言は単に笑えるだけではなく、爽やかな感動をもたらした。
審査員のアンタッチャブル・柴田英嗣は、「こんなクリティカルなアホ、初めて見た」と絶賛。同じく審査員のオードリー・若林正恭は「小難しい漫才が増えてくる時代の中で、ワクワクするバカが現れたな、と思って」とコメントした。
偏差値の高い大学出身のインテリ芸人がどんどん増えている中で、バッテリィズは無教養なエースの「人間としての魅力」を前面に出して、新しい形の漫才を完成させた。今年は文字通りお笑い界のエースとして各所に引っ張りだこになるだろう。
(ラリー遠田/お笑い評論家)
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