無敵の大統領がまき散らす陰謀論という“毒薬”…米国はいずれ、我々が知る国ではなくなるかもしれない【トランプ2.0始動 暴走どこまで/半沢隆実】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月23日 9時26分
都合の悪い事実は全部ゴミ箱へ(C)ロイター
【トランプ2.0始動 暴走どこまで】#3
前回2020年の大統領選での敗北を否定したドナルド・トランプがまき散らした陰謀論は、米国社会が飲み込んだ“毒薬”だ。副作用は米国の民主主義をむしばみ続けている。
共和党候補だったトランプは当時、民主党のジョー・バイデンに敗北したが「民主党による大規模不正があった」とデタラメな主張を展開。これを信じ込んだトランプ支持者らは、21年1月6日、バイデンの勝利認定を阻止するため、ワシントンにある連邦議会を襲撃した。
警備部隊と衝突し、警察官1人を含む5人が死亡した。事件後1500人以上が訴追され、「死に物狂いで戦うぞ」と議会に向かうよう扇動したトランプも起訴された。以来トランプは一貫して公に負けを認めていない。
権力者にとって陰謀論ほど便利なものはない。都合の悪い事実は「これは陰謀だ」とラベルを貼った分厚いゴミ袋に入れてしまえばいい。後はうそとはったりが効果を発揮する。
トランプは今回の選挙で不法移民に甘い民主党を攻撃するため「移民は住宅地からネコとイヌを盗んで食べている」と根拠なく放言、反移民感情が強い支持基盤固めに利用した。
■米国民の41%が陰謀論を信じている
調査会社ユーガブが23年11月に実施した世論調査では、米国民の実に41%が「世界は闇の団体や個人に操られている」と信じていた。また「20年選挙で票の集計機械が不正操作された」「民主党幹部らが子どもの売買春に関与している」を信じる回答も30%前後に上る。
現在のトランプは無敵だ。大統領選挙と同時に行われた議会選で、連邦上下院を共和党が握り、最高裁判所も保守派が多数を占める。
従順な側近に囲まれたトランプには第1次政権のような有能なブレーキ役がいない。
連邦議会襲撃や選挙への不正介入、売春の口止めなど約90の重罪で起訴、一部で有罪判決をうけながら、トランプはすべてを「政治目的の魔女狩り」とラベル貼りしたゴミ袋に投げ入れた。
そして「自分を陥れた」として政敵や司法関係者に対する刑事訴追の準備を進めている。襲撃事件で逮捕、収監された自分の支持者らを「政治犯」と呼ぶトランプは就任初日に、彼らに恩赦を与えた。それは米国が守ってきた正義の理念崩壊の序章を意味する。
トランプの大統領任期は4年で終わるが、陰謀論という毒薬の効果は長く残る。米国はいずれ我々が知る国ではなくなるかもしれない。 (敬称略=おわり)
▽半沢隆実(はんざわ・たかみ) 1988年共同通信社入社。社会部記者を経てカイロ特派員、パレスチナ紛争、イラク戦争、アフガニスタンなどを取材。ロサンゼルス、ロンドン、ワシントンの各支局長を経て特別編集委員。
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