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引っ越しシーズンで現場は混乱…「内見できない物件」問題に2つの要因

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月23日 9時26分

引っ越しシーズンで現場は混乱…「内見できない物件」問題に2つの要因

オンラインで申し込み、気楽にキャンセル…

【不動産業界 噂の現場】

 奇妙なことに、賃貸住宅市場では、存在するのに「見られない物件」が増えているという。ネット上には、入居者を募集中の物件は実際に豊富にあるものの、内見できる部屋は極めて少ないのだ。

 都内の賃貸仲介店は、「検索サイトに掲載されている複数の部屋に問い合わせたところ、即入居可能な物件は10%もなかった。他は入居中で、内見もできない状態だった」と現状を語る。

 実は、ここ数年で、こうしたミスマッチが常態化してしまっているという。それが特に顕著になるのが、年明けから続く引っ越しシーズンだ。賃貸仲介店にとって、1月から3月は年間利益の半分以上を稼ぐ最大の商戦期。だが、その繁忙期に実際に内見・契約できない物件の問い合わせ対応に追われてしまっているという。

 この状況を招いた要因は、主に2つある。

 1つは仲介現場での「とりあえず申し込み」の常態化だ。賃貸仲介の担当者が入居の審査落ちを懸念して「念のため複数の物件を押さえておく」よう促すため、入居希望者も気軽に申し込みを入れるようになった。オンライン申し込みシステムの普及がこれに拍車をかけ、複数の物件に同時に手続きを進めることが容易になった。後でもっとよい物件が見つかれば軒並みキャンセルしてしまう。結果、複数の物件が「申し込み中」のステータスとなり、他の入居希望者が検討・内見できない状態が続く。

 また、もう1つの大きな要因は、賃貸住宅の管理会社の多くが2カ月前の退去通知を求めるようになったことだ。これにより、まだ居住中なのに「空室予定」として募集される物件が増加。内見できないため、入居希望者は仮申し込みでキープするしかなく、その物件は他の人が検討できなくなるという悪循環が生まれている。

 賃貸情報サービスのエアドア(東京)の鬼頭史到社長は「この状況を改善するには、広告を掲載する仲介会社だけでなく、入居状況を把握している管理会社との連携も強め、物件情報を常時更新できる仕組みが不可欠です」と語る。さらに「業界全体でのルール作りも合わせて必要」と課題を挙げる。

 関係者が協調して安易な入居申し込みは制限しつつ、キャンセルされた仮申し込みの情報や内見可能時期、現入居者の退去予定日などをリアルタイムで反映し、無駄な問い合わせや新たな仮申し込みを防ぐ仕組みづくりが求められる。ただ、改革には相当な時間を要するだろう。

 検索サイトの対策とSNSによる監視の目によって、架空の部屋を“エサ”にする「おとり物件」は不動産市場から大幅に姿を消した。だが、今度は確かに存在するのに姿を見せない「幽霊物件」が広がっているようだ。

(小野悠史/ニュースライター)

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