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やせる糖尿病薬「SGLT2阻害薬」サルコペニアが心配な高齢患者に使って大丈夫?

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月23日 9時26分

やせる糖尿病薬「SGLT2阻害薬」サルコペニアが心配な高齢患者に使って大丈夫?

筋肉量の低下や筋力不足に悩む高齢者は多い

 糖尿病治療薬である「SGLT2阻害薬」の評価はうなぎ上りだ。血糖コントロールはもちろん、体重減少効果も期待でき、慢性心不全や慢性腎臓病への適応拡大もされている。その一方で、筋肉量の減少に伴って筋力や身体機能が低下した状態を示すサルコペニアへの影響が懸念されている。高齢者への使用をどう考えたらいいのか? 糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長に聞いた。

「サルコペニアは、身体機能の低下のみならず、転倒や骨折のリスクを上昇させ、死亡率をも押し上げる。高齢者は注意すべき病態です」

 筋肉量の低下や筋力不足に悩む高齢者は多い。「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究」によると、日本の高齢者全体で筋量減少者は850万人、筋力低下者は1000万人、身体機能低下者は350万人と推計されている。

 しかも、糖尿病があると、筋線維を取り巻く組織の密集度を表す筋質も低下する。60歳以上の男女1099人を対象にしたROADスタディーによると、サルコペニアの有病率は8.2%で、糖尿病がある人は筋質の低下が顕著だったと報告している。

 その一方で高齢者人口の増加に伴い、膵臓の機能が低下するため、糖尿病の高齢者数は増え続けている。

 そんななか、血糖コントロール作用だけでなく体重減少効果があるとされるSGLT2阻害薬を高齢者に使って大丈夫なのか?

「SGLT2阻害薬は、腎臓近位尿細管で原尿からグルコースの再吸収を担うSGLT2の働きを阻害することで尿糖排泄を促し、血糖値を抑える薬です。その一方でこの薬は体内のエネルギー代謝にも影響を及ぼします。それがこの薬がやせる理由なのです」

 人は全身の細胞に栄養素と酸素を取り込み、ミトコンドリアで酸化。ATPと呼ばれるエネルギー源を作り、二酸化炭素と水を排出する。ATPを作る3大栄養素が糖質、脂質、タンパク質で、それぞれがATPを作るための回路を持っている。

 炭水化物は消化管でブドウ糖(グルコース)に分解・吸収され、血液を介して全身に運ばれ、インスリンによって血液中から細胞内に取り込まれる。その後「糖代謝」(解糖系、クエン酸回路、電子伝達系)によりひとつのグルコースから30以上のATPを作り出す。

 血糖値が下がると、体は飢餓状態となりエネルギーバランスが崩れたと判断。不足したグルコースを補うために肝臓に蓄えられたグリコーゲンを分解してグルコースに戻し血糖値を維持する。

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