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加速する初任給引き上げ「大卒30万円」の懸念材料…“格差拡大”で中堅社員の士気低下も(中西文行)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月24日 9時26分

加速する初任給引き上げ「大卒30万円」の懸念材料…“格差拡大”で中堅社員の士気低下も(中西文行)

年功序列は崩壊(C)日刊ゲンダイ

【経済ニュースの核心】

 政府の「賃上げ」要請に呼応するように日本経団連に加盟する大企業を中心に、初任給引き上げが加速している。業界を問わず、「企業は人なり」と優秀な人材確保のため、大卒で月30万円台に乗せる企業も相次いでいる。

 ファーストリテイリングは2025年3月の給与改定で新卒社員の初任給を33万円にする。明治安田生命保険は25年4月入社で33.2万円(全国転勤あり、固定残業代込み)と2年連続で引き上げた。三井物産や伊藤忠商事など大手商社は軒並み30万円を超えている。

 東京海上日動火災保険が26年4月、転勤と転居を伴う場合の大卒で最大約41万円とし、三井住友銀行も同入行の初任給を30万円にする。

 26年には新入社員と2~3年社員の給与はほぼ横並びとなり、一段と実績重視の厳しい出世競争に直面する。

 また、その初任給アップの原資は、年功序列の崩壊で管理職の給与圧縮でもあろう。

■中小企業は21万円台

 民間シンクタンク・産労総合研究所の調査によると、24年4月入社の大卒社員の初任給は、従業員数1000人以上の大企業で24万1082円、同299人以下の中小企業では21万8118円。30万円台が相次ぐ東証上場の大企業の水準には到底及ばない。人件費などコストの増加分を価格に反映した割合を示す「価格転嫁率」は49.7%と賃上げ原資に悩む中小企業は多い。

 日本商工会議所の小林健会頭は初任給の引き上げについて「中小企業にとってインパクトは非常に大きい」と指摘する。「初任給を引き上げてしまうと、今いる全社員の賃金も(それ相応に)引き上げないといけなくなる」と産経新聞で話している。新入社員の給料だけを大幅に引き上げれば中堅社員らの不満は高まる。新卒と中堅の“給与格差”は社内をギクシャクさせかねない。

 日本企業の99.7%は中小企業、従業員数では全体の70%が中小企業で働いている。介護、飲食など業界にもよるだろうが、就職氷河期に入社した社員の給与が現在も月給30万円以下なら家族も嘆くだろう。

「格差拡大」で諦め気分となれば、「社会活力」は低下するが、グローバル展開の大企業は、米国のITや投資銀行のような高額を提示しなければ世界から優秀な人材の採用は困難だろう。

 欧米では給与は能力によって決まり、年齢はあまり考慮されない。そのため新卒でも1年目から年収1000万円という人もいる。日本の大卒初任給は、アメリカの2分の1以下、スイスの3分の1以下で、韓国にも抜かれている。「企業は人なり」──就職人気ランキングに株式投資のヒントもありそうだ。

(中西文行/「ロータス投資研究所」代表)

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