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人間ドックで兆候をつかまえたい…自覚症状あり→病気が見つかるでは手遅れも

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月24日 9時26分

人間ドックで兆候をつかまえたい…自覚症状あり→病気が見つかるでは手遅れも

「自覚症状あり→病気が見つかる」では手遅れも

【心臓外科医が教える患者のための基礎知識】#8

「健康診断で心雑音を指摘されました」──といって患者さんがやってきます。職場の健康診断ですから、病気の自覚がない50歳前の人ばかりです。見つかった病気は僧帽弁閉鎖不全症。今まで仕事をしていたわけですから、自分ではあまり症状を感じない状態です。

 4月の終わりごろ、S・Eさんが私の診察を受けました。

「相当に悪いですよ。心臓も肥大しているし、不整脈も出ています。すぐに何とかしないと大変なことになりますよ」

「わかりました。でも連休明けに会社の昇進試験があるんです。それまでは頑張らないと」

 半年たって奥さんが病院にやってきて叱られました。

「どうして主人にもっときつく言わなかったんですか!」

 ご主人は5月の連休中にご自宅で突然、亡くなられたのです。

 健康診断や人間ドックで病気が見つかり、助かった人はいっぱいいます。人間の体は自覚症状がある→病気が見つかる、では手遅れな場合が多いのです。あらかじめ何らかの兆候をつかまえる方法をできるだけ試すべきです。

 ただし健康診断や人間ドックでは、血液検査や心電図、体重測定といった短時間で次々実施できるものが多いと思います。画像で体の中が映し出される検査でないと、脳動脈瘤や大動脈瘤、胆石、がんなどは見つかりません。毎年ではなくても、脳のMRIとCT、心臓の冠動脈のCTは10年に1回ぐらいの間隔で受けるべきだと思います。おなかの検査では超音波検査やCTです。

 ただし、これらの検査は大病院ではすぐにはやってくれません。患者が医者に「特に症状がないんですが、友達がこの前、末期のがんが見つかったとかいう話を聞いて、心配なのでおなかの超音波検査をお願いします」と頼んでも断られます。

 病気じゃない人の検査の費用は保険診療ではないからです。それに検査は臨床検査技師さんが行います。何でもない人の検査を評判の悪い医者が彼ら彼女たちに依頼すると「あのバカ医者が仕事を増やすせいで家に帰れないじゃない!」となって、ますますそのお医者さんの評判が落ちるのです。医者は病院内での評判がその実力をささえているのです。

「近くの病院で心臓病だからとクスリをもらっているのですが、この10年間、心電図検査も何もしてもらえないんです。自費でいいですから心臓超音波検査とかやっていただけませんか。今診てもらっているセンセイにここに来たことがバレたら困るんで」──こういう患者さんが増えることでしょう。

 デジタル・トランスフォーメーションとかいう厚生労働省のおままごとのような計画では、よその病院で受けた診療や検査まで、当局や隣国に掌握されてしまうのかも知れません!(おわり)

(南渕明宏/昭和大教授)

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