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真空ジェシカは圧倒的センスで媚びない笑いを貫くお笑いアーティストだ(ラリー遠田/お笑い評論家)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月25日 9時26分

真空ジェシカは圧倒的センスで媚びない笑いを貫くお笑いアーティストだ(ラリー遠田/お笑い評論家)

「真空ジェシカ」の川北茂澄(右)とガク(C)日刊ゲンダイ

【2025新春「笑」芸人解体新書】#8

 真空ジェシカ

  ◇  ◇  ◇

 昨年末の漫才コンテスト「M-1グランプリ2024」で3位に食い込んだ真空ジェシカは、4年連続の決勝進出という偉業を成し遂げた。年々レベルが上がり続けるこの大会で、4度続けて決勝に上がるのは並大抵のことではない。

 しかし、その立派な戦績とは裏腹に、川北茂澄(写真右)とガク(同左)の2人から成る真空ジェシカの本来の芸風には安定感のかけらもない。

 バラエティー番組に出ても、ボケ担当の川北が空気を読まず好き勝手にボケを連発して場をしらけさせることも珍しくない。そんな彼らは持ち前の圧倒的なセンスだけを武器にしてここまで戦ってきた。

 2人は大学生の頃にコンビを結成した。当時から川北のセンスは際立っていて、アマチュアでありながらピン芸人の大会「R-1ぐらんぷり」で準決勝まで進んだこともあった。コンビを組んですぐにネタ番組にも出演することができて、彼らは若手の注目株として一時的に脚光を浴びた。

 しかし、どんなときにも自分たちのやりたいことだけを貫くスタイルがなかなか理解されず、ブレークには至らなかった。観客に合わせるような姿勢が一切見られなかったことから「とがっている」と思われることも多かった。

 ただ、2021年に初めて「M-1」の決勝に進んだことで一気に道がひらけた。テレビの仕事が増えたことで、徐々にそのキャラクターが理解され、受け入れられるようになってきた。

 彼らは特定の世代や文化圏の人にしか伝わらないような間口の狭いボケを好んでいて、そういう部分が理解されにくい原因となっていた。

 だが、昨年の「M-1」の決勝1本目で見せた「商店街ロケ」のネタでは、伝わりづらいボケが比較的少なかったため、見事に爆笑を取って高得点をマークした。

 最終的には令和ロマン、バッテリィズには及ばず3位に終わったものの、初めて決勝で2本の漫才を見せて、自分たちの面白さを知らしめることには成功した。

 最近では芸人志望者の間でも、憧れの芸人として真空ジェシカの名前を挙げる者が多いという。いつまで経っても学生時代の初心を忘れず、自分たちのやりたいことにこだわっている姿が格好良く見えているのだろう。

 媚びない笑いを貫く真空ジェシカは、今の時代には貴重なお笑いアーティストなのだ。

(ラリー遠田/お笑い評論家)

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