トランプが大統領令でDEI禁止…アメリカのダイバーシティーは終わったのか(シェリーめぐみ/在米ジャーナリスト)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月29日 9時26分
DEI禁止に各地で反対の声が上がる(C)ロイター/USA TODAY
第2次トランプ就任式から1週間、大量に発令された大統領令がさっそく実行に移されている。中でも不法移民の強制送還への着手は早く、大都市では不法移民と見なされた人々が拘束され、連日ニュースとなっている。
その中で、市民の多くが同様に強く懸念しているのは、DEI(Diversity Equity and Inclusion)の禁止条項だ。ダイバーシティー・エクイティー&インクルージョンは、人種的マイノリティーから女性・LGBTQまで、歴史的にハンディを負った層に社会で公平なチャンスを与えるために考えられた措置で、そのルーツは1960年代の公民権運動に遡る。バイデン前政権は特にこの動きを強く推し進めた。今では日本の大企業でも主に女性の雇用において採用されている。
ところがトランプは大統領令で、まずアメリカの雇用におけるDEIを禁止した。特定の層を優遇することで、それ以外の層を逆差別し、社会の分断を促進するというのがその理由だ。今後は肌の色や性別にかかわらず実力主義で採用する「カラーブラインド」社会を目指すという。
そう言えば聞こえはいいが、問題はそこに、1965年の雇用機会均等令の撤廃も盛り込まれていることだ。労働者を人種や性別で差別することはできないという、公民権運動時代の大統領令の廃止は、DEIを大きく超えて女性やマイノリティーの権利の縮小であることは明らかだ。
アメリカでは女性の賃金はいまだ男性の84%にとどまっている。また白人家庭の収入は黒人の1.6倍、貧困率を比べてもとても公平とは言えない。奴隷制時代の名残を強く残す制度的差別が大きな原因だ。だからこそ「特権」を持つ白人とのバランスを取るために、DEIの推進が必要と考えられてきた。
DEIは#metoo運動やブラック・ライブズ・マター運動を通じ急速に浸透した。それに対し逆差別されていると感じた白人男性の反感を、トランプが掘り起こしたとも言える。
さらにアメリカはマイノリティー移民の流入で、2045年には白人人口が半数を割ると予測されている。それを見越し白人がパワーを維持するための対策が、トランプのマイノリティー移民排斥でありDEI廃止でもあるという見方も強い。
(シェリーめぐみ/ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
トランプ米大統領、連邦政府の多様性、公平性、包摂性(DEI)を終了する大統領令に署名(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月28日 0時15分
-
トランプ米政権、反DEIに基づいて連邦政府を再編 NSCメンバーを異動
ロイター / 2025年1月24日 8時43分
-
[社説]大統領令連発 危ういトランプ流独裁
沖縄タイムス+プラス / 2025年1月23日 4時0分
-
トランプ氏、多様性政策撤廃の動き加速 民間部門の調査警告
ロイター / 2025年1月22日 14時43分
-
トランプ氏初日、相次ぐ大統領令...「パリ協定脱退」から「旗の掲揚」まで
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月21日 18時10分
ランキング
-
1銅線が盗まれ鶏十数万羽が死ぬ…カンボジア人の容疑者3人目を逮捕
読売新聞 / 2025年1月30日 8時34分
-
2「お前ばかか?」千代田区長選討論配信で「政治団体Q」黒川敦彦氏が暴言&接触 退場なしに女性候補者が怒り
J-CASTニュース / 2025年1月30日 10時50分
-
3東大阪の切断遺体、衣服身に着けず 殺害の可能性、身元特定急ぐ
毎日新聞 / 2025年1月30日 11時28分
-
4尾瀬「入域料」の議論浮上、群馬県が発案「環境保全へ早く導入したい」…福島県は観光客の落ち込み懸念
読売新聞 / 2025年1月30日 8時10分
-
5【気象情報】北陸を中心に積雪急増のおそれ 日曜日は関東でも雪か?東京都心も積もる可能性
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月30日 6時23分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください