突然母が別人になった(12)両親と叔母への罪悪感で追い詰められていった
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月29日 9時26分
祈るような気持ちで真夏の虹を眺めた(如月サラさん提供)
母が熱中症で運ばれた救急医院の退院日から認知症専門医院の初診日まで、10日間の空白が生まれることになった。父は体調を崩し、自室でずっと寝ている。2020年の8月はコロナ禍で、東京に住む私は実家に行くこともできなかった。母に絶対に接触してはならない、そうしないと診察を受け付けないとS認知症専門医院に言われたからだ。
そこで、母の妹である叔母たちに相談すると、助け舟を出してくれた。朝昼晩と順番に実家に通い、母の世話をしてくれることになったのだ。
叔母たちから電話がかかってきても、母の様子はまったく良いようには思えない。何もできずに連絡を待つだけの私は、両親と叔母たちへの罪悪感でどんどん追い詰められていった。
しかし何もしないわけにはいかない。母がレビー小体型認知症だろうということはほぼ確実だと思ったので、私は調査を始めた。編集者である私は、あるテーマについて調査をし、その分野を一定程度まで理解するということが得意だ。
熱中症で救急搬送されたA救急病院で「入院当初の『せん妄』はなくなった」と言われ、退院した母。確かに、熱中症でせん妄状態になることはあるようだ。そういえば、母はエアコンをつけていなかった。そしておそらく、ろくに水分を取っていなかった。
「だから、私におかしな電話をかけてきた時は、脱水によるせん妄状態だったのではないか。母は本当は認知症ではないのではないだろうか」
そう信じたい気持ちはありながらも、叔母たちからの報告は決して良い内容ではなかった。
「好みの食べ物を準備していったら、やっと一口だけ食べたよ」「お風呂に入らないから、お湯を持っていって体を拭いたよ」「私の体の中からコロナが生まれて世界中に広がったから、世間に迷惑をかけていると言っているよ」
何よりも、その年の前半に、早朝から深夜まで叔母たちに順繰りに電話をかけては「さびしい、さびしい」と言って切ろうとしなかったという母が、能面のような無表情でほとんど口を利かず、トイレまで小股で歩いて行くのがやっとだという報告は胸が苦しかった。調べた症状がぴったり当てはまっていたからだ。やはり、母はレビー小体型認知症だと認めるしかないのだろうか。 (つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。
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