「痔の手術をしないとがんになる」と言われて…【不適切な治療を受けないために】#3
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月30日 9時26分
写真はイメージ
【不適切な治療を受けないために】#3
関東地方に住む元会社社長の佐藤育三さん(仮名=60代)は2024年春、痔ろうの治療のために、ある肛門外科を受診した。痔の患部の画像を見せられ、医師に「痔ろうの手術をしないと、直腸がんになる可能性がありますよ」と言われ、青ざめた。
お尻を突き出して肛門から直腸の入り口まで検査を受けた。大の大人がそんな姿をさらしているだけで戸惑っているのに、「がんになる可能性」という医師の言葉に動揺した。受付の女性に言われるままに3カ月後の手術の予約を入れたという。
家に帰っても、「3人の子供はまだ結婚していない。孫を見る前にがんで死ぬのはごめんだ……」との思いが頭の中でぐるぐる駆け巡った。
同時にあの病院の無機質な対応に、「このまま手術を受けていいものか」という疑問もよぎった。
佐藤さんによると、問診から検査、診察に至るまで別々の部屋に通されて、それぞれの検査技師や医師に、「次は検査です」「あっ、これは手術ですね」と矢継ぎ早に機械的な対応をされたという。
「自分が人間として大切に扱われていないと。検査技師や医師はマニュアル通りに動いているようで、患者ではなくパソコンばかり見ていました」(佐藤さん)
そうした違和感を持ちつつ、手術の前日を迎え、入院中の下着などを持参して病院へ。
しかし、マニュアル診療がアダになったのか、病院の手違いが発覚して手術は延期となった。
「この時、この病院に任せていいのかと目が覚め、医療に詳しい知人に相談しました」(佐藤さん)
その人の紹介でセカンドオピニオンで大学病院の肛門外科を受診することに。検査後に担当医は次のように診断した。
「痔は浅いところにあるので、すぐに手術はしなくていいでしょう。がんのリスクはゼロではないが、現状ではその可能性は極めて低いでしょう」
昔と違っていまはインターネットで医療情報や病院の評判を検索できる。情報過多になるのもよくないが、迷ったら徹底的に調べるか、医療に詳しい人に相談した方がいい。
佐藤さんはセカンドオピニオンで当初の手術方針から経過観察へと治療方針がガラリと変わった。そして恐れていたがんの不安も霧散するのであった。
(医療ジャーナリスト・大家俊夫)
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