トランプ「対北戦争」断念 “和解”に向け米朝非公式接触か

日刊ゲンダイDIGITAL / 2017年9月14日 9時26分

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内政問題に追われ余力がない(C)AP

 国連安全保障理事会が採択した北朝鮮への追加制裁決議は明らかに“骨抜き”だった。米国は当初、原油の全面禁輸など強力な制裁内容を盛り込もうとしたが、北朝鮮の後ろ盾である中国とロシアに譲歩する形で輸出量の上限設定にとどめた。追加制裁が不発に終わり、トランプ政権による北朝鮮“先制攻撃”の懸念も薄まりつつある。

 そもそも内政問題に追われて余力がない今の米国が北朝鮮に攻め込むのは難しい。今週、米フロリダ州を襲った大型ハリケーン「イルマ」による被害はジョージア州を含む米南東部の9州におよび、米ABCテレビは、米国で少なくとも8人の死亡が確認されたと報道。今もフロリダ州では約650万戸が停電し、経済損失は4兆円に上るとの試算がある。

「フロリダ州は白人富裕層が多く、共和党にとって大切な支持基盤。原子力空母リンカーン、駆逐艦ファラガット、揚陸艦イオー・ジマなどをフル稼働してハリケーン被災者の救援にあたっています。軍隊を救援に優先的に回す必要があり対外戦どころではないのです」(米軍関係者)

 一方、トランプ大統領は原油下落による財政悪化拡大で国民生活が大混乱に陥っているベネズエラに軍事介入を示唆し、タリバンの勢力拡大で治安が悪化しているアフガンに兵員4000人規模を増派しようとしている。三正面攻撃は難しく、北朝鮮は後回しにせざるを得ない状況だ。

 そして、このタイミングで米朝が非公式に接触したことが明らかになった。スイスで開かれている東アジアの安全保障に関する国際会議に、米国からはエバンス・リビア元国務次官補代理、北朝鮮からは外務省北米局のチェ・ガンイル副局長が出席。日本、韓国、中国、ロシアの政府当局者らも参加し、会議は13日(現地時間)まで行われる。どのような話し合いが行われているのか。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏が言う。

「あくまでも推測ですが、実質的な6カ国協議を行うことで、米朝の緊張緩和に向けて落としどころを探ろうとしているのでしょう。トランプ政権の北朝鮮への要求は明白でICBMと核放棄。金正恩委員長は、米国に核保有を認めさせることで現体制維持を図ろうとしています。協議は平行線をたどりそうにみえますが、必ずしもそうともいえない。条件次第でトランプ大統領が北朝鮮への攻撃を断念する可能性はあります。参考になりそうなのは“パキスタンモデル”です。国際社会が事実上の核保有国と認める代わりに、北朝鮮はこれ以上のICBMと核開発を完全に凍結し、他国に核を拡散もしないことを確約する。トランプ大統領がすぐに首をタテに振るとは思えませんが、北朝鮮が『既存のICBMと弾道ミサイルの全廃』など、いくつか追加の条件を付ければ認める可能性があります」

 マーケットも北朝鮮の有事リスクがひとまず後退したと好感。トランプの「戦争断念」に期待が高まりつつある。

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