実業団陸上の“飼い殺し制度”は公取委の指摘で変わるのか?

日刊ゲンダイDIGITAL / 2019年6月20日 9時26分

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実業団陸上のビッグイベントは元日恒例の全日本駅伝(C)共同通信社

「おそらく制限は撤廃されるでしょうが、これは恥ずべきことです」

 スポーツライターの津田俊樹氏がこういうのは、17日に公正取引委員会(以下=公取)が発表した「スポーツ事業分野における移籍制限ルールに関する独占禁止法上の考え方について」の件だ。

 スポーツ界における移籍制限の実態調査を進めてきた公取は、「人材(選手)の獲得を巡る公正かつ自由な競争という観点からみた場合に、その合理性や必要性について十分に検討した上で設定されたとは言い難いものが多く存在することが認められた」という。

 顕著な例が、日本実業団陸上競技連合が設けている、選手の移籍制限だ。

 実業団の選手は所属チームから退部証明書を交付してもらわなければ「円満移籍者」とは認められず移籍希望チームに無期限で登録申請できない。つまり、所属チームの指導方針や練習法が合わなくても退部届にハンコを押してもらえない限り、嫌でも我慢するか、陸上をやめるしかないのだ。前出の津田氏がこう語る。

「実業団陸上の選手が移籍できず、いわゆる飼い殺しにされていることはずいぶん前から問題視されていた。実業団側がこの規則を作ったのは『主力選手の引き抜き防止策』というが、そもそも移籍の自由化を認める気などサラサラないから知恵を出し合うこともなかった。移籍制限ではないが、女子レスリングの伊調馨が練習拠点を変更して強化部長から嫌がらせを受けたことが世間を騒がせた。選手の移籍を認めないことはパワハラの温床ともいわれてきたのに、国の機関に指摘されなければ改革できないとは恥ずかしい限りです」

 実業団連合の西川晃一郎会長は昨年12月、ホームページで「現在の移籍制限制度を見直し、改革することが必要ではないかと考えています」と述べているが、それは公取から独禁法違反になる恐れがあると伝えられたからだ。

■強まる国の関与

「スポーツは本来、政治や“お上”から最も遠いところにあるべきものです。今はJOC(日本オリンピック委員会)からして国にベッタリ寄り添い、資金の面倒も見てもらっている。理不尽な移籍制限は他の競技にもある。自分たちで組織改革ができなければ、この先国の関与はますます強まるでしょう。その点が懸念されます」(前出の津田氏)

 国の力による「移籍の自由」なら喜んでばかりもいられない。

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