君が代とラグビー日本代表における良質なハイブリッド

日刊ゲンダイDIGITAL / 2019年10月20日 9時26分

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アイルランド戦で国歌斉唱をする日本代表選手(C)ロイター

【ラグビーW杯 四方山話】#13

 W杯で旋風を巻き起こしているラグビー日本代表だが、日本国籍を持たない選手がいることで驚かれた読者も多かったかも知れない。これは「条件をクリアすれば他国の代表資格を得られる」というラグビーユニオン独自のルールに起因する。

 ジャパンの強さは彼らなしでは語れないが、我らがブレイブブロッサムズ(BRAVE BLOSSOMS=勇敢な桜戦士)が歌う「君が代」も〈日本と外国のハイブリッド〉だというのをご存じだろうか? 

 実は日本国国歌の編曲は、ドイツ人音楽家の手によるものなのだ。

 君が代の美しさの秘密に「和声」の見事さがある。そもそも日本古来の音楽には本来、和声は存在しない。すべて同一音(ユニゾン)で作られている。「君が代」にしても、宮内省(当時)の雅楽師が作ったメロディーは、主旋律のみだった。そこに和声を付けたのが、海軍の音楽教師として1879年に来日したフランツ・エッケルト。彼は着任早々、雅楽や催馬楽などを研究し編曲作業に着手した。

 この若きドイツ人音楽家は、単に和声を付けるのではなく、出だしと最後をあえてユニゾンにした。これはもうセンスとしか言いようがないのだが、「ユニゾンこそが日本らしさ」であることを感覚的に分かっていたのであろう。ここに、見事に西洋と日本の音楽の融合を見たことになる。

 歌詞は、平安朝時代の文徳天皇の皇子・惟喬親王に仕えていた木地師が詠んだ和歌が元になっている。親王の命を受け、良材を求めて各地を訪ね歩いていた際、谷間の渓流に山積していた不思議な「石」を発見する。「これは珍しい石。めでたい石である」と、見たまま、感じたままを詠んだのが「君が代」のオリジナルなのである。

 ラグビー日本代表の面々は、宮崎県にある日本最大級のさざれ石を見学したそうだ。学術名・石灰質角れき岩。崖から崩れ落ちた石灰岩のかけらや小石が積み重なり、そこに長い年月をかけて雨水によって溶け出した石灰分が流れ込み、ついにはひと塊の岩(巌)になった――。

 日本ラグビーの歴史はさざれ石のごとく、強固な巌となりて、なおも時を刻んでいくのである。

(いとうやまね/コラムニスト)

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