やっぱりカビって危険なの? 専門家に聞いてみた

GIZMODO / 2020年3月13日 23時0分

200312MOLD Illustration: Elena Scotti (Photos: Getty Images, Shutterstock)

カビは生きている。

世の中には「ちょっとのカビくらい大丈夫」という人と「ちょっとでも生えたらおしまい」という人がいます。では、もしカビが生えたパンを食べてしまったら、とりあえず歯をしっかりめに磨くだけで大丈夫と思ってよいのか、それとも病院に行くべきなのか…。どうなんでしょう?

専門家に身近な質問をぶつけるGiz Asksシリーズ、今回は「カビは危険なのか」聞いてみました。

このトピック、学生時代に過ごしたアメリカで、ヨーロッパ出身の子たちが「ドミトリーのシャワールームにカビが生えてた!こんなところで生活できない!」とプンスカ話していたのを思い出しました。それ以来、私もカビは全世界的に悪なのかと再認識したつもりでしたが…、。専門家たちによるとすべてのカビがそうとは限らないこと、なかには疾患を引き起こすものもあることがわかりました。

Ronald E. Gots

International Center for Toxicology and Medicine (ICTM)プリンシパル

カビは危険かどうか。質問としてはシンプルですが、飛行機は危険なのか、細菌は危険なのか、と尋ねるのと同じようなものです。私たちの腸内には何兆という細菌が生息していますが、こうした細菌は正常機能に不可欠な一方で、血流に侵入すると死に至る可能性があります。

カビは世界のバイオマスのおよそ25%を占めています。植物や樹木を分解し、重要な成分を土壌に戻すうえで重要な役割を担っているのです。私たちは常にカビのバーチャルエアロゾルに取り囲まれていますが、それらは多くの場合、良性です。

アレルギーの人は、犬や猫のフケと同様にカビによりアレルギー症状を起こすことがあります。それも時には、非常に深刻な感染症につながる可能性があります。オハイオ州のヒストプラスマ症、カリフォルニア州のコクシジウム症などは屋外のカビによるもので、年間約1,000人が感染し、中程度の呼吸器感染症を引き起こすこともあります。

したがって結論は、まれに疾患を引き起こすことがあるものの、多くの場合カビは有益でほぼ無害だといえます。

Robert L. Buchanan

メリーランド大学Center for Food Safety and Security Systemsディレクター

ヘビに有毒なものとそうでないものがいるのと同じように、ほとんどのカビが危険とは限りません。とはいえ、危険なのもあります。

食べ物に発生するようなカビ(緑色や白のファジーなアレです)は、少し湿気があったり、室温で放置されたり、冷蔵庫に長時間放置されたりした製品においてよく見られます。こういったカビは味に影響を与える可能性があるのと、あまりおいしく映らないことに変わりませんが、特に大したことはありません。食べることはおすすめしませんが、少し食べたくらいなら問題ないでしょう。

一方で、食品に発生するカビで非常に危険なものもあります。総称してマイコトキシンと呼ばれる、さまざまな毒素を生成するカビです。これらのうち、おそらく世界的な公衆衛生の観点から見逃せないのがアフラトキシンとして知られる毒素のグループです。

かなり激しい肝毒性があり、ほかの生物学的実在から生成される最も発がん性の高い生物兵器だと指摘できます。これらは通常、水分が多すぎる状態で保管された乾燥製品に見られます。暖かい環境を好む傾向がありますが、少し暖かいような日でも成長します。こうした影響を受けやすい食品の例としては、トウモロコシやピーナッツがあります。ただ、製品として適切に保管され、リスクの高いものが市場に出回らないよう多くの管理要件が敷かれています。

理論的に、ある程度のアフラトキシンを摂取すると24時間以内で死に至ります。とはいえ実際、1か月の間に1日約1mgを摂取しなければ肝臓に直接損傷を与えることはありません。これは通常、発展途上国において発生する事案です。

これらはカビのなかでも最悪なレベルのものです。しかし、わずかなカビによって生成される有毒化合物はほかにも何百とあります。

逆に、食品の製造プロセスでカビが使用されることもあります。ブルーチーズの青色の部分を少し取り出して顕微鏡で調べると、実際にカビが成長しているのがわかります。 また伝統的な醤油はカビを発酵させて大豆のタンパク質を分解させます。こうした食べ物の場合は、カビの成長が鍵となっているのです。

Nancy Keller

ウィスコンシン大学マディソン校 細菌学・医療微生物学・免疫学 教授

どの真菌に着目するかにもよります。カビとは、特定のタイプの糸状菌を一般化した名称です。カビという言葉を使用するとき、おそらくその多くはシャワーカーテンや冷蔵庫の食べ物で成長している菌類を指しているでしょう。しかし、それはほんのごく一部を示す表現です。

一部の真菌は、マイコトキシンと呼ばれる毒素を生成します。 たとえばそれらの1つであるアフラトキシンは非常に一般的なものです。これは最も強力な自然肝臓発がん物質であり、特に食糧供給を管理するのに十分な資金がない国では肝臓がんを引き起こす要員となります。

アフラトキシンはピーナッツ、コーンシード、木の実などの種子作物に発生することがあります。これらは特に熱を好んで大量に発生する可能性があって、気候変動が種子作物のアフラトキシン増加につながることを示唆する研究もいくつかあります。

ただここには裏表があって、アフラトキシンは私たちが好まない真菌の天然産物である一方、ペニシリンは私たちが好む真菌の天然産物です。 1928年に偶然発見されたペニシリンは、第二次世界大戦中にも活用されました。さらに糸状菌に由来する有益な天然物は多くあり、人々と病気との戦いに非常に役立っています。

したがってカビがどのようなもので、どこに生息しているかなどのコンテキストによって答えは変わるものだといえます。

Seri Robinson

オレゴン州立大学 再生可能原料分析 准教授

ほとんどのカビは、大して危険ではありません。アレルギー反応を何らかの毒性反応と勘違いする人も多くいるかもしれません。

科学文献を掘り下げると、黒カビに対する見解はまだ明らかでないことがわかります。ある研究では問題ないと述べ、べつの研究ではこの世の終わりのように書かれていることもあります。

(カビという言葉が真菌を意味するなら)カビが危険だと言うのは「この世には毒のあるクモがいるらしいから、外を出歩く犬は避けた方がよい」と言っているようなものです。同じ世界にも多様な生き物がいるんです。

Ginger L. Chew

アメリカ疾病予防管理センターDEHSP 科学担当副所長

カビによる健康への影響はさまざまです。鼻づまり、のどの痛み、咳、喘鳴、目の痛み、発疹といった症状が出る人もいます。喘息のある人やカビに対してアレルギーがある人は、深刻な反応を示すこともあります。免疫不全や慢性肺疾患の人は、カビによって肺に影響が出る可能性もあります。

微生物揮発性有機化合物など(カビ胞子、菌糸体、胞子や菌糸体のフラグメント、カビ臭)の吸入は、感受性に関係なく、人間の刺激作用に関連しています。農業環境など、高濃度な場所では過敏性肺炎を引き起こす真菌もあります。ただし、何をもって高濃度であるか判断することは困難なため、水環境をよく管理し、カビは除去することをお勧めします。

カビに対して敏感な人は鼻づまり、喘鳴、目や皮膚の赤みやかゆみを発症することもあります。アレルギーのある人はカビに対してより敏感な反応を示すでしょう。慢性閉塞性肺疾患、喘息など慢性呼吸器疾患のある人は、呼吸困難を経験することもあります。重度の反応としては、発熱や息切れなどがあります。免疫抑制や肺疾患のある人は真菌感染を受けやすい傾向があります。

2004年の医学研究所(IOM)の研究によると、健康な人であっても屋内のカビによって上気道症状、咳、喘鳴などの症状があったことが実証されています。喘息のある人は喘息の症状が起き、免疫疾患のある人は過敏性肺炎が起きたといいます。

また最近の研究には、一部の小児(特に遺伝的に喘息発症の可能性がある者)においては早期のカビ曝露が喘息の発症と潜在的に関連していることを示唆しているものもあります。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング