地中レーダーで古代ローマの町の姿が丸ごと明らかに

GIZMODO / 2020年6月14日 22時0分

Image: L. Verdonck et al., 2020/Antiquity/Gizmodo via Gizmodo US

一種のタイム・マシン。

地中を透視できるレーダーを使い、土を一切掘り起こすことなく古代遺跡を「発掘」した考古学者チームが、その驚くべき研究成果を一挙公開しました。

世界初となったこの取り組みでは、現在のローマから50キロ北に位置する古代ローマの町、ファレリイ・ノーヴィ(Falerii Novi)を丸ごと地中レーダーで探査し、初歩的な地図を作成することに成功。まだ「初歩的」なのは、280億個にのぼるデータポイントすべてを研究者たちが分析するのは到底無理だったからだと共同著者のひとり、Martin Millett氏(英ケンブリッジ大学・考古学)は米Gizmodoに語っています。

非侵襲的な発掘

Image: Verdonck et al., 2020/Antiquity via Gizmodo US

地中レーダーとは、電波を地面に発射して内部からの反射波を計測することで埋設物や地下構造を可視化する手法です。これを使ってファレリイ・ノーヴィ全域を探査したところ、建物や記念碑などの構造物はもちろんのこと、通路や上水システムのパイプまでもが2千年の時を経て姿を現したそうです。

これまで知られていなかった建築のディテールが明らかになり、ほかのどの古代ローマ遺跡にも見られないユニークな特徴も見つかったと同時に、時代が進むにつれてファレリイ・ノーヴィがどのように変化していったのかも一目瞭然に。まるで時代という薄皮を一枚一枚はがしていくかのような、タイムマシンでちょっとずつ時をさかのぼっていくような、そんな多重的な地図ができあがり、学術誌『Antiquity』にて発表されました。

スケールは大きいのにメチャ細かい作業

ファレリイ・ノーヴィはローマ帝国内に約2千あった町のうちのひとつで、その存在は古くから文献に記されています。古文書に初めて登場するのは紀元前241年頃で、中世期までローマの支配下にあったものの、700年頃に放棄されています。

Image: Verdonck et al., 2020/Antiquity via Gizmodo US

今回の調査で使われたのは上の画像のようなトラクターっぽいオフロードカーに、レーダー機材を搭載したリアカーをつないだもの。遺跡の面積はおよそ30ヘクタールあり、その敷地内を12.5センチ毎に計測を重ねていったそう。なるほどデータポイントが280億個もあるわけだ!

ファレリイ・ノーヴィの地表には森林や新しい建造物が存在していないため、地中レーダーの技術を試すのにはうってつけの場所でした。それはこの土地がイタリアの法律によって保護されているからなんですが、だからこそ遺跡の発掘も禁止されていたんですね。

「でも、たとえ法律により発掘が禁止されていなかったとしても、この遺跡すべての土を掘りおこして発掘するのは無理だったと思います」とMilletさんは米Gizmodoに話しています。ちなみに、かの有名なポンペイ遺跡は発掘するのに200年もかかったのだとか。

古代の町が立体的に浮かび上がる

Image: Verdonck et al., 2020/Antiquity via Gizmodo US

地中レーダーが調査したところ、ファレリイ・ノーヴィの町には浴場、市場、野外劇場や繁華街のほかにも、町はずれに対で建立された寺院、古代ローマ特有の大きな中庭を有するアトリウム住居などが見つかったそうです。また、町の北側には大規模な記念碑が発見されており、ふたつの構造物がお互いに向き合っている様式はほかのどの古代ローマ遺跡でも見つかっていません。

「今回の調査の重要性のひとつに、ファレリイ・ノーヴィがいかに平凡な町だったかがあります。古代ローマ時代にはことさら平凡だったこの町にも、これだけ緻密な建築様式が存在していたことに驚きを隠せません」とMillettさんは説明しています。

そして、平凡ながらもほかの古代ローマ都市と比べると非伝統的な設計になっているのがファレリイ・ノーヴィの興味深いところです。磁気探知器を使った以前の調査では、ファレリイ・ノーヴィに神聖な場所が点在していることがわかっていました。さらに今回の調査ではその神聖な敷地内、特に町の門に隣接した場所に、大きな建物の痕跡が発見されました。

Image: Verdonck et al., 2020/Antiquity via Gizmodo US

「これらの神聖な場所がどのように機能していたかはまだわかっていないものの、今回の調査結果は古代ローマにおいて統一された都市計画など存在せず、むしろ様々な概念のもとに多種多様な都市計画が行なわれていたという理解を深めるものになった」と論文には書かれています。

さらに「[今回のファレリイ・ノーヴィでの調査結果が]ポンペイなどよく知られた都市との比較対象となることで、古代ローマの都市計画についてより幅広い議論展開が期待される」とも。

冒頭に書いたとおり、この調査結果はまだ「初歩的」な段階にあり、今後は膨大なデータを効率よく処理するために一部をコンピューターにより自動化するそうです。データの解析が進めばさらなる発見があるかもしれません。

なにより、遺跡調査の手法として地中レーダー技術が理にかなっていることを概念実証できただけでも大きな成果です。石ころひとつ動かさないままに、地中に隠されている古代都市を詳細に「見る」ことができたわけですから。

Reference: 地中レーダーの現状(総務省)

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