NASAからビッグニュース「月面は水だらけですわ」

GIZMODO / 2020年10月28日 22時0分

201027_moonwater_top Image: NASA

月に関する“エキサイティングなニュース”をお約束していたNASAから、期待を裏切らない大発表が。

月面には水分子がいたるところに散らばっていて、太陽光が当たる場所にも、まったく当たらない永久影にも存在しているらしいことがわかったそうです。

「月には水がある」というのは長年言われ続けてきたことなんですが、今回の研究で初めて水の分子の存在を確認できたそう。以下、詳しく見ていきたいと思います。

発見の意義

学術誌『Nature Astronomy』に10月26日付で発表された2本の研究論文は、月に「水」という生命に欠かせない貴重な天然資源が豊富にストックされていることをほのめかしています。

以前から月面、特に月の極付近においては水が凍った状態で存在していると言われてきたものの、直接的な証拠は得られずじまいでした。ところが、ここにきてついに水分子の存在が赤外線カメラによって明らかに。しかも、日当たりのいい場所にも存在していることがわかったんだそうです。

太陽光の当たらない永久影だけでなく、月面全体に水が存在しているらしいことは、科学的な視点から見て非常に意義のある発見であると同時に、今後月への有人飛行ミッションを進めていきたいアメリカにとっては大きなターニングポイントとなりそう。NASAが計画しているアルテミス計画では、月の南極近くで水氷を採取するのがミッションのひとつとなっていますが、今回の研究はこのミッションがじゅうぶん遂行可能であることを示唆しています。

しかも、月に水が豊富にあるのなら、将来月を探検したり、開墾したい人々がわざわざ地球から水を持って行かなくても月で調達できるようになるかもしれません。今後の宇宙開発のあり方に大きく影響しそうです。

やっぱり水は存在した

月には水があると前々から言われてきました。

望遠鏡を使った調査では、月の南極に明るいシミが見えたことから水があるのではないかと推測されました。そしてその推測を裏付けるかのように、インドのチャンドラヤーン1号に載せたNASAのレーダーからは、無数の小規模クレーター内に水氷が溜まっている様子が観測されました。さらに2016年には、月の自転軸の傾きが月面に残った水氷によってもたらされているのではないかとの仮説も加わり、多方面から水の存在がうかがわれていたのです。

しかし、このように月面の水に関する多様な研究がなされたにもかかわらず、水分子の存在そのものは確認できずにいました。これまでの赤外分光法を使って月面を調べた結果では、 3ミクロンの波長が検出されたのみ。残念ながらこの波長では、月面にあるものが水分子なのか、それとも化学的に似ているヒドロキシ基なのかは見分けがつきませんでした。

この問題を解決するべく今回新たに導入されたのが、「空飛ぶ天文台」の異名を持つSOFIA(The Stratospheric Observatory for Infrared Astronomy、成層圏赤外線天文台)です。ボーイング747を改造したSOFIAには、赤外線観測用の反射望遠鏡と赤外線カメラが設置されており、高度4万1000フィートの成層圏を飛行しながら赤外分光分析を行なうことが可能。そしてこのSOFIAで月面を分析した結果、ついに水分子特有の波長である6.1ミクロンを観測することに成功したそうです。

米テキサス州ダラスにある惑星科学研究機関(Planetary Science Institute)のMatthew Siegler氏は、今回の観測は「本格的に」水分子を検出した初めてのケースだったとメール経由で米Gizmodoに説明してくれました。

ヒドロキシ基は比較的簡単にできます。太陽風に乗って飛んできた陽子が月面の酸素原子とぶつかるだけでできるので、月の石にもヒドロキシ基が含まれています。

一方で、水はそう簡単に生成されませんから、水とヒドロキシ基はそれぞれ別のプロセスを経て生成された結果、月面に存在しているのでしょう。原始の月の活発な火山活動からできたのかもしれませんし、小惑星や彗星が衝突したときのインパクトでできたのかもしれません。

今回、水分子は月の南半球にあるクラビウスクレーター内で確認されました。どれぐらいの量が確認されたのかというと、NASAによれば1立方mあたり350ミリリットル(小さめのペットボトル約一本分)。ちなみにこれ、サハラ砂漠の土壌に含まれる水分量の100分の1に相当するそうで、大量に存在しているとは言えなさそうです。

しかも、水が溜まったり、氷のかたまりになっているわけでもなさそう。NPRによれば、水の分子と分子の距離があまりに離れているために、固体も液体も形成せずバラバラに存在している状態なのだとか。

NASAとしては今後さらにSOPHIAを使ってクラビウスクレーター以外の場所でも観測を続け、いずれ月全体をカバーする水の分布地図を作成していきたいそうです。

明るい表通りで

今回の研究で一番驚きなのは、水分子が太陽光のふりそそぐ明るい月面で確認されたことです。

以前から、「コールドトラップ」とも呼ばれる永久影に水が存在していることはわかっていたそうなのですが、まさか日光にさらされても水が蒸発しないとは…!? なぜなのか、本格的な真相究明はまだこれからです。

ただ、『Nature Astronomy』に掲載された論文のひとつによれば、月面で発見された水分子はどうやら細かい鉱物(ガラス)に内包されているか、塵の粒子の間に押し込まれた状態で存在しているようで、だからこそ太陽光にさらされても蒸発しないのではと推測されています。

「自由に運動している水分子が月面に長い間存在しうるためには、110ケルビン度(マイナス163°C)にまで冷やされる必要があり、これはコールドトラップ(永久影)内でしか実現できない環境です。ところが、今回発見された水分子はガラスのような鉱物に内包されているために、凍てついた月の極以外のエリアでも存在できるのではないかと考えられます」とSiegler氏は説明しています。

月面の小さな冷凍庫

鉱物内に閉じ込められた水分子に加え、凍った水が月面の小さなくぼみにたくわえられている可能性も現実味を帯びてきました。

『Nature Astrology』に掲載されたふたつめの論文は、永久影がこれまで知られていたよりももっとたくさん存在していると指摘しています。永久影はその名の通り完全に太陽光から遮断されているため、温度が低く保たれ、水氷の長期保存が可能だと考えられています。

201027_moonwater_variations Image: Nature Astronomy

著者の一人であるPaul Hayne氏いわく、「月の極の近くに立っていると想像してみると、月面は見渡すかぎり暗い小さな影だらけで、これらの影の多くは水氷で満たされている」そう。

たとえば、月の南極付近に位置するシャクルトンクレーターは直径21km、深さ2km。クレーターの内部は決して太陽光が当たらない永久影になっている部分があり、温度はマイナス184°C前後に保たれています。

Hayne氏率いる研究者チームは、NASAの月周回無人衛星、ルナー・リコネサンス・オービターを使って、クレーターサイズのものから一円玉サイズのものまであらゆる大きさの永久影を調べた結果、何億年もの間完全に闇に閉ざされていたものも発見したそうです。

月の極付近には小さめの永久影が特に多く存在しているそうで、面積を総合すると4万平方kmにも及ぶとか。永久影のうち、6割は南極付近に位置していることもわかったそうです。この研究以前に算出されていた総面積は1万8,100平方kmだったことからも、永久影が月面を占める割合が考えられていたよりもずっと広く、その中に保存されているであろう水氷の量ももっとずっと多いのではないか、そして今後の月への有人ミッションにおいて、水がより身近な存在になるのではないか…との期待がふくらみます。

もちろん、今回の研究は永久影の存在を確認しただけであって、永久影すべてが水を保有しているわけではありません。中に水氷が入っているかまでは確かめられていないので、水が存在できる環境が思ったよりも豊富にあるよ、と言ったニュアンスのほうが適切ではありますね。

月の水はどこからきたのか

気になるのは、永久影に保存されている(かもしれない)水がどこからきているか。

Siegler氏は彗星や小惑星の衝突、月面の火山活動、または太陽風によって引き起こされる化学反応などを挙げている一方で、今回新たに発見された鉱物内に閉じ込められている水分子が放出された可能性も指摘しています。そういう意味では、「これらの鉱物は総じて月全体規模の貯水池を形成しているとも言えそうです」とSiegler氏は話しています。

ただ、今のところはどうやったらこの「貯水池」から宇宙飛行士たちが使えるような水を取り出せるかはわかっていません。今後研究が進んで、いずれ飲み水やロケットの燃料として水素を取り出せるようになれば、月での有人ミッションのあり方が劇的に変わりそうです。

今後の課題は?

NASAが開いた記者会見では、NASA本部内の有人飛行ミッション局に所属するJacob Bleacher氏が、今後の課題として月面の水分子がどのぐらい安定しているのか、またどのぐらいの量が宇宙に蒸発してしまうのかを調べる必要性を挙げています。

NASA本部内の宇宙科学局ディレクター・Paul Hertz氏は「今回見つかった水分子がどのように形成されているのか、そしてなぜ月面上で存続できるのか課題が提示された」とも語っています。さらに、将来的にNASAの宇宙飛行士が月面に降り立ったときに、この水を活用できるのかどうかも調査する必要があると語っています。

アルテミス計画に期待しかない

また、Siegler氏は、「もし月面が本当に水だらけであれば、たとえば露天掘りのようなやり方で月の表面から水を採取することも可能になるかもしれません。もちろん露天掘りを推奨しているわけではありませんが」と話しています。

ただ、マティーニを飲むにも、水分補給するにも、液体水素や液体酸素ロケットの燃料補給にも、月での生活において水は不可欠です。水を地球の重力圏から取り出して月まで持ってくるのには膨大なコストがかかりますから、もし水を月面で調達できるようになれば宇宙ミッションのコストもそれだけ下がり、燃料補給もしやすくなります。

NASAのアルテミス計画がこのまま順調に進めば、早ければ2024年にも女性宇宙飛行士と男性宇宙飛行士が月に降り立つことになります。彼らは、果たして月面で水を見つけられるのでしょうか。

訂正[2020/11/02]「マイナス110ケルビン度」を「110ケルビン度」に訂正しました。絶対温度にマイナスはつかないです。ごめんなさい。

Reference: NPR, NASA, Nature Astronomy (1, 2)

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