文書に集中できる美しいガジェット:E ink使用の“煩悩フリー”なワープロ「Freewrite Traveler」

GIZMODO / 2020年10月30日 17時0分

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憧れる。でも、すぐ飽きちゃうかな…。

「Freewrite」はインターネット機能のない“ただ書く”ためのワープロデバイス。オリジナル版をコンパクトにして持ち運びやすくなった「Freewrite Traveler」を、米ギズモードJohn Biggs記者がレビューします。

私のような執筆業や、論文など長文を書く機会の多い方は、Freewrite Travelerにドはまりするかもしれません! これはE ink使用のポータブルなワードプロセッサで、作成したドキュメントはメール送信可能。そして何より、気が散る要素を一切排除した「煩悩フリー」なデバイスなのです。

TwitterやFacebookから解放され、エンドレスの無限スクロール地獄に陥ることもないわけですから、どれだけ作業がはかどるか…想像してみてください。まるで往年の作家バロウズ2世がモロッコで薬の禁断症状と闘いながらタイプライターのオリヴェッティで文章に没頭していたような感じ(わかりにくい?)。

正直、Freewrite Travelerはそれ以上の環境と使用感を提供してくれます(あ、禁断症状は出ませんよ)。クラムシェル型デバイスで、閉じた時のサイズ感はNintendo Switchと同じくらい。バッテリーはUSB-C充電1回で最大4週間持続可能で、メインウィンドウのディスプレイは4.76×2.76インチ(121mm×70mm)。キーボードの上端に沿って3つのフォルダボタンが配置され、それぞれが1件ずつプロジェクトを保管できます。「Send」ボタンをプッシュすれば、作成した文書をメール送信することも可能。キーボード下部にある2つの赤い「New」ボタンを押すとフォルダが消去され、はじめからやり直すことができます。ほんと、シンプル。

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Freewrite Traveler

これは何?:純粋主義者のための煩悩を排除したポータブルなライティングツール。

価格:430ドル(約4万4,900円)

好きなところ:「書く」専用のコンパクトなツール。

好きじゃないところ:かなり高価。作文がうまくなるとか、速くなるとか、ではなさそう。

必要最小限の機能と、ガッチリめのキーボードがシブい

メインウィンドウの下の小さなウィンドウにはフォルダ情報や時計、そしてワードカウントと標準的な読み取り速度に基づいた「読み終えるまでの時間」が表示されます。開くとすぐに起動し、真っ白なE inkページがお目見え。Wi-Fiアクセスポイントとペアリングしている場合は、文書をテキストおよびPDF形式でメールの受信トレイに瞬時に送信することも可能。

キーボードは初期のThinkPadを彷彿とさせるキートラベルとがっちりしたスプリングで、ポータブルには最適です。オリジナルのFreewriteが持つメカニカルな「カタカタ」感はありませんが、MacBookやPCとの違いはハッキリと感じられます。オリジナルにはない矢印キーで画面内の移動もできるように。

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「書く」ことに特化した魅力的なデバイス。だけど…

TravelerはFreewriteのポータブル版。プラスチックとシリコン製の、軽くてコンパクトな煩悩フリーデバイスに生まれ変わっています。どちらのデバイスも、確かに魅力的。少なくとも、私のようにツイートの嵐を無視できないライターにはいいでしょうね。Webライター仲間も皆、「ただ書く」専用のアイテムは、もはや神からの贈り物、なんて言っています。名作家ケルアックのごとく、1日数千という単語を紡ぎだせるよう設計されたこのデバイス。使ってみたいと思いますよね?

ただ、いざ買うか、と考えると…。正直、私は二の足を踏んでしまいます。シンプルに感想を言うなら「宣伝で謳われているほどには、使えない…」という感じです。

私はこれまで、「書くだけ」的なデバイスを数えきれないほど購入してきました。最近では、Smith Corona(スミスコロナ)の電動タイプライターです。あとは1993年に学童向けに発売されたAlphasmart Neoも持っています。もっといい文章が書けるようになりたいので、年に数回はメカニカルキーボードを試していますね。要するに、シンプルなキーボード的なものには結構手を出しているんです。

それはなぜか? ジャズの名手がギルド社のギターを持つように、良い作品は良い道具から生まれると思っているからです。素晴らしいキーボードがあれば、ライターとしての世界がひっくり返るような、言葉にできないほど「執筆体験」が向上するのではないかと。そう思ってあれこれ試してはいるものの、劇的な変化には出会っていません。キーボードはあくまで、キーボード。だからといって私の宝探しが終わることはありませんが。

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Freewrite Travelerには430ドル支払う価値はないかも

ここで言いにくいことをはっきりお伝えしましょう:より良い文章を書くのに、この430ドルのデバイスが必要とは言えません。Travelerを使っても、文書作成プロセスが楽になることも、ライティングが向上することもありません。たとえ煩悩フリーのデバイスをお求めだとしても、Travelerである必然性はなく、古いラップトップのWi-Fiを切ってしまえばそれでOKですし、Calmly Writer のようなツールでも同じ効果を得ることができます。

実際、このマシンの仰々しさはちょっと鼻についちゃうんです。カチカチいうキーボードや1950年代風のスタイル、ちょっとアナログっぽい感じ…。ブランド戦略の甘い罠にひっかかってはいけません。ヘミングウェイがロイヤル社のQuiet de Luxeを愛用していたのは、「タイピングが究極的に快適」だったからではなく、たまたまそれしか持っていなかったからですよ。

世界中のライターの皆さん、今持っているもので満足しませんか? 集中力を高めるためだけに430ドルのプラスチックの塊が本当に必要ですか? 私はプロのライターです。これまでいろいろな場所で1万1000もの記事を執筆し、本も8冊出していて、執筆道具を問わず1000ワードくらいなら20分で書けます。

実は、私はオリジナルのFreewrite を持っています。1年ほど使ったという同業者の方から買い取ったのですが、正直何年も使っていないので、Travelerを買ったところで実際の「トラベル」に携帯することもたぶんないでしょう(また旅ができる世の中になったら、ですが)。

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Freewriteの発想は大好きです。ハードウェア自体も好き。ライティング用の、煩悩フリーツールというアイデアは素敵です。ただ、購入するとなると、話は別。皆さんも、気をつけてくださいね。多分、パッと見た感じ、「あらいいじゃない!」となると思います。でも、本当にこのタイプのデバイスが自分のスタイルに合っているか、よーく考えてくださいね。でないと、必然的に失望することになるので。

文書作成時に「インターネット接続なし」はキツイ

「ライティングは、筆を選ばず」。もちろん、より優れたツールを使えば、少々執筆がスピーディにはなるでしょう。私もオリジナルのFreewrite を使って、ホラー小説を書いてみました。その時はアドレナリン出まくりの興奮状態でした。なんとも自由な体験で。ただ、もちろん、その自由を感じられたのはほんの束の間でした。

自分で創り出したファンタジー小説を書く分には、このデバイスも悪くないかもしれません。しかし、フィクションから現代のノンフィクション、そして学術的なものまで、大部分の文章を書くには常時インターネット接続がどうしても必要になります。ナポレオンの愛馬の名前を調べることもできず「ただ書く」だけの作業は、大変な苦痛。あっという間に、「だめだこりゃ」とラップトップに飛びつくことになるはずです。

今回、このFreewrite のレビューを書くにも、価格を調べたりリンクを入れたりしますので、Freewrite では事足りません。複雑な現代小説を書くにも、こうしたシンプルすぎるデバイスではなく、執筆支援ソフトのScrivenerなどが必要になるはず。

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万人受けはしないけど、ハマる人にはバシっとハマる

だからといって、Freewrite Travelerや別のライティングツールを試してはいけない、と言っているわけではありません。Freewrite をカチカチたたいたり、Underwoodのタイプライターに紙を差し込んだりするのは、とても楽しいです。ノートパソコンを使ったライティングに不満があったり、「一日中タイピングとZoomの繰り返しだから、気分転換したい」という時にデバイスを替えてクリエイティブなスイッチを入れる、という時にも最適です。

Freewrite Travelerは万人受けする商品とは言えませんし、私個人的には、ちょっとお勧めするには高価すぎるかな、と思っています。ちなみに類似商品は他にもありますが、これを超えるほどのものはありません。繰り返しになりますが、どうか万能アイテムだと信じて購入するのはやめてください。他の商品同様、あくまでツールです。そして、これはとってもクール。

ただ、一番大切なライティングツールは、あなたの頭の中にあります。どんなキーボードやペン、鉛筆、そしてE inkタイプライターを使っても、それは変わりません。「使ってみたい!」と想像するのは、いいことですけどね。

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まとめ

・Freewriteはライターにとって素晴らしいツールですが、値段は高めです。

・メカニカルキーボード愛好家には、たまらないビルドクオリティ。

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