タイのバンコクでバナナを食べてニューヨークを思い出す
Global News Asia / 2014年9月20日 9時15分
道端に座り込み、日清カップヌードルの大きな看板を羨望の眼差しで見上げた。あのカップヌードルをズルズルッと啜ることができたらどんなに幸せだろうかと思った。
パカパカッと馬の蹄の音が聞こえた。騎馬警官だった。やっぱニューヨークの警官はかっこええよなー、とぼんやり眺めていると、筆者のほうに近づいてくる。
そして「おい、そこに座るな!」と大声で言う。筆者は「オー、アイム・ソーリー」と腰を上げて、安アパートにスゴスゴと撤退した。
絶食5日目あたりから、このままでは自分は本当に餓死してしまうのではないかという危機感を感じるようになった。なんでもいいから口にしなくてはならないと思った。そこで筆者はルーズリーフを食べることにした。よく揉んで柔らかくしてから口の中に放り込んだ。が、舌の上に広がるケミカルで毒々しい味にすぐにオエッと吐き出してしまった。
絶食7日目にようやく日本の母から国際郵便小切手が届いたときは、本当に泣きたいくらい嬉しかった。これで生きられると思った。
早速、郵便局で現金に換えた。外に出ると、紙コップを持った物乞いのおっさんが近づいてきたので、10ドル札を与えた。おっさんが「ゴッド・ブレス・ユー(神の祝福を)」と言うので、筆者も「ゴッド・ブレス・ユー・トゥー」と返した。
そしてまず向かったのはステーキハウス。肉汁の滴るTボーンステーキを貪り食ってやろうと思ったのだ。が、ほんの一切れ程度しか喉を通らなかった。7日間もなにも食べていなかったせいで胃が縮こまってしまっていたのである。結局、その日まともに食べることができたのはバナナだけだった。
バナナを食べられる。それだけで本当にありがたい。あの頃は、お金はなかったけれど、悲壮感なんてものは少しもなかった。心に大きな夢があったから。
今だって同じじゃないか。仕事がない。お金もない。女もいない。けれども、心には大きな夢がある。筆者の夢を少しも理解してくれないタイ人の嫁と別れ、ようやく自分の本当の人生を、自分の夢を取り戻すことができたような気がする。
1日1本のバナナと夢さえあれば筆者は生きていける。
【執筆 : 小林ていじ】
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