【タイ】タイ救急救命活動の現状
Global News Asia / 2015年3月30日 17時0分
2015年3月30日、日本人在住者や観光客の多いタイにおける救急救命活動の現状をレポートする。
タイは東南アジア諸国の中で決して治安の良い国ではない。そのため、しばしば日本人も傷害や殺人事件、強盗などの被害に遭っている。交通モラルも先進国と比べて非常に悪く、交通事故の発生件数も多い。些細な交通事故は日常的に日本人も被害に遭っている。
そんな状況なので、気になってくるのが救急車などの配備状況だ。タイにある公共の救急車はタイ公共保健省が管理運営する「ナレントーン」という救急部隊になる。一応タイ全土に配備されている。一応というのは、各地にある大きな国立病院を中心に数台ずつの配備になっている程度であるという意味だ。事件事故の多いタイでは不十分と言える。
この状況をカバーするのが「華僑報徳善堂」や「華僑義徳善堂」などの救急救命を行う慈善団体だ。
名称からもわかる通り、タイの華僑や華人が設立した団体である。本職員は数百名程度だが、無給で働くボランティア隊員たちをそれぞれが数千人規模で抱える。彼らが日夜、タイの傷病者を応急手当てし、病院へ緊急搬送している。
ボランティアとはいえ、入隊資格は20歳以上であること、また最低でも応急手当講習の初級は修了していることが条件になる。彼らは救急車や活動に必要な機材などをすべて自前で揃えている。本部もすべて寄付で成り立つ。タイの救急救命活動はこのように一般市民の功徳の精神が鍵になっているのだ。
タイで初めて成立した救急救命の慈善団体は「華僑報徳善堂」だ。潮州系の華僑や華人によって設立され、1937年にタイ政府に正式に認可された。この報徳善堂の運営手法がその後設立される義徳善堂など大小多数の団体のモデルとなっている。
先のナレントーンは実は1990年代後半に設立された部隊で歴史が浅い。それまではタイには公共の救急車が存在せず、すべて報徳善堂などの活動に頼っていた。しかも、活動の費用の大半もボランティアの私財で賄われていた。
タイ政府は近代のこの100年もの間、救急救命活動にはなんら興味を持っていなかったようだ。そのため、現在でもタイの道交法などには緊急走行車両を優先することが明示されていない。
そして、タイ政府も1993年に日本の緊急搬送の技術を導入し、やっと救急救命に着手した。
後手に回っている感は否めないにしても徐々に変化はしてきている。これまで救急車を優先しないどころか、救急車の前に割り込むようなモラルだったタイも2014年ごろから譲るようになってきており、一般市民にも変化が見られるようになった。
慈善団体も依然各地に配備され、昼間の渋滞時などを含めても日本の救急車到着平均時間8.5分に引けを取らないレベルだ。政府の救急救命に対する姿勢の変化に平行して、ボランティアを含めた隊員らの意識も向上している。
タイの救急救命のレベルは決して低くはないので、いざというときに心強い。
【執筆 : 高田胤臣】
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