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【タイ】「世界で貢献するJICAシニア海外ボランティア」5・シニアが見たバンコク市民の交通事情

Global News Asia / 2015年6月21日 13時0分

バスに急ぐ人達。(タイ・バンコクで撮影)

 2015年6月21日、シリーズ「世界で貢献するJICAシニア海外ボランティア」を定期的にお届けする。JICAシニア海外ボランティアとして、国立パトムワン工科大学で、就職支援の指導に当たられている平野 正和さんに「シニアが見たバンコク市民の交通事情」について執筆してもらった。

 バンコクに観光で来られると団体バスで移動することが多いと思います。効率的ですね。住んでみるとそういうわけにいかないので、市民の足を学ばなければなりません。タイ語を解さない、にわか庶民の経験をお伝えします。

 市内中心部のオフィス街や繁華街には高架式電車と地下鉄が走っていて、おしゃれで快適です。しかし、地上は世界的名物の慢性渋滞。幹線道路から魚の骨のごとく脇道がたくさん伸びているのですが、行き止まりで、幹線だけが先に進めます。

 加えて、一方通行も多く、渋滞が起こるのも納得です。渋滞の中で救急車が隣に合流してきたことがあります。結果的に1時間余りサイレンを聞き続けました。救急車の中に居る人の気持ちは想像したくありません。

 それでも、街中の移動にはバスが便利です。一番安い、エアコン無しの赤バスに乗ってみましょう。新参者が心しておくべきことがあります。バスのルートは何とか調べるとして、乗ったら車掌が来て36円程度の切符を切ってくれます。

 さて、どこで降りるか。車掌は助けにならないし、各バス停に止まって安全確認・発車、などは期待できません。街並みを頼りに全神経を集中して、降りるべきバス停を即座に判断します。直ちにドア前に立って意思表示したら、バスはスピードを緩めてくれます。止まるのではありません。そこで、走るバスのドアが開いたら飛び降りるのです。

 乗るときも、降りる時も、年寄りも、子供も、飛び乗って、飛び降ります。少し大げさですが、少なくとも私はこの種のバスに乗ったことがあります。予防知識は持っていたほうがいいでしょう。

 車内が混むと、車掌が来ないので無料になることも。列車の場合もそうですが、初めから無料のバスがいくらか走っていて、所得の低い庶民にとっては有難いことです。しかし、むしろ働く意欲がそがれるかもしれませんね。

 一方、高架鉄道に沿った華やかなビル街の裏手に、約50メートル幅の運河が長く延びています。ここでは、50人乗り程度の小型船が高速で行き交っており、運賃はバス並みで手軽です。

 しかしながら、この水が限りなく汚く、思わずひるみます。運河の周りには、スラムとまではいかないまでも低所得の人達が多く住んでおり、狭い場所で屋台用のジュースや食材あるいは内職的な小物を作ったりしています。

 この地域の汚水がそのまま流れ込んでいるそうです。船は桟橋に高速で近づき、接岸の瞬間に客は文字通り飛び乗ります。これに失敗して水中に落ち、ばい菌が脳に達して死んだ人がいると聞きました。

 座席には、しぶき避けのビニールシートが備えてありますが、ある種の覚悟が必要です。私はまだ論ずるに未熟ですが、観光バスから見えない世界があります。
【執筆/撮影 : JICAシニア海外ボランティア 平野 正和】

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