在中日系企業の渡航自粛が解除されつつあるMERS騒動の源「韓国」の現状とは!?

MERSについての注意を呼びかける韓国語と英語の案内(我妻伊都 撮影)　

　2015年8月11日、今年春からアジア中に警戒と混乱をもたらした韓国の中東呼吸器症候群(MERS=マーズ) 騒動は、死者36人を出したものの、韓国政府が7月28日にWHOに先駆けて出した収束宣言を受け、訪韓を自粛していた在中日系企業などが渡航自粛を解除する動きが広がっている。

　特に中国山東半島以北の在中日系企業には、韓国仁川国際空港の経由は待ち時間が短く、欧米便でも夕方までに乗り継げる便が多いなど利便性に優れているため利用する機会は多い。

　今回、訪韓自粛が解除された韓国へ半年ぶりに訪れてみた。

　韓国到着前の機内で今まで見たことない詳細に健康状態を記載する黄色いチェック表への記入が求められた。しかし到着後、検温検査所で記載した用紙を渡してからは騒動前と変わりないあっさりとした入国審査で入国できた。

　到着エリアでの注意を促す立て看板を見ると、MERSについてもあるが、それ以上に香港の夏のインフルエンザやエボラ出血熱に対する看板の数が目立つ。他の注意事項も並べることでMERS騒動を相対的に小さくする狙いがあるのかもしれない。

　仁川国際空港内ではマスクをする人はおらず騒動前と変わらず多くの人たちで賑わっていた。

　筆者はソウル駅前のホテルで1泊したが、翌朝、ソウルを代表する明洞(ミョンドン)へ足を運んでみると午前中にもかかわらず、予想以上に多くの人たちを確認することができた。しかし筆者のようにトランジットや出張で訪韓する人間は多少戻り始めてきたかもしれないが、観光目的の訪韓者の戻りはこれからのようで、半年前にそこかしこで見かけた中国人観光客は皆無だった。

　韓国からの出国もこれでいいのかと心配になるくらい短時間で出国できた。出国時にも検温検査を実施するなどして、MERS感染者をこれ以上、韓国から1人も出さないくらいの国家としての意気込みを期待していたのでやや拍子抜けな感は否めない。

　このまま今回の韓国MERS騒動が完全終息宣言へと向かうのかアジア中が注目しており、秋以降にアセアンからの訪韓者が戻ってくるかは、今後の韓国政府の正確な情報公開にかかっている。
【執筆 : 我妻伊都】