【カンボジア】原士郎さん、パンガシウス養殖で魚自給率の向上を目指す―JICAカンボジア事務所
Global News Asia / 2015年8月23日 12時0分
2015年8月21日、JICAカンボジア事務所が発行する「カンボジアだよりNo48」に、『カンボジア産の魚を食卓にもっとパンガシウス養殖にかける夢』と題する記事が掲載された。
カンボジアの魚自給率向上を目指す・原士郎さん。豊富な経験を持つ養殖のプロフェッショナルの活躍が続く。
(記事)プノンペンから約2時間、今年4月に開通した「つばさ橋」を渡ったプレイベン州に、水産分野のコンサルタント、原士郎さん(66)が運営に関与する魚の種苗ファームがあります。敷地内には、コンクリートの水槽や、仔魚のエサになる動物性プランクトン(ミジンコ)の生産槽、卵をふ化させる装置などが整然と並んでいます。
ここで生産しているのはパンガシウスと呼ばれる魚です。カンボジアを含む東南アジアに生息するナマズの仲間。白身魚として、日本にも輸出されています。原さんが携わる同ファームでは2015年から本格的な採卵を始め、孵化仔魚から稚魚まで育てた後、養殖農家からの注文に応じ出荷しています。原さんは2005年から足かけ10年にわたり、コンサルタントとしてJICAの養殖プロジェクトに関わったほか、シニアボランティアとしてカンボジアの水産養殖技術向上に携わってきました。
カンボジアの人たちは、動物性タンパク質の約80%を水産物から摂取していますが、漁場であるトンレサップ湖やメコン川の周辺以外の農村地域では、栄養源である淡水魚が慢性的に不足しています。
JICAの「淡水養殖改善・普及プロジェクト」のフェーズ1では、原さん自身プレイベンやタケオなど、特に水産物の供給状況が悪い南部4州で淡水魚の養殖普及に取り組みました。さらにフェーズ2ではプルサット、バッタンバンなど北西部3州で事業を展開。また、プロジェクト以外にもシニアボランティアとして、プレイベンの淡水養殖研究開発センターで高級エビのオニテナガエビの稚エビ生産に挑んだ時期もありました。
カンボジア各地で淡水魚養殖のさまざまな課題を目の当たりにした原さんですが、その経験から、「国内外で需要の高いパンガシウスなら、今後飛躍的に生産量が伸びる可能性が高く、稚魚と養殖魚ともマーケットの拡大余地が大きい」と確信しました。コイやティラピアなどの養殖も技術指導しましたが、「土地や水と相性が合い、より高い生産性が見込めるのがパンガシウスだった」といいます。
「JICA専門家として参加したプロジェクトのフェーズ2は今年2月に終わりましたが、その後もカンボジアで養殖普及に携わりたいとずっと考えていました」と言う原さん。「夢があるんです。養殖技術を広めて、カンボジア人の食卓にカンボジア産の魚をのせたい。今はまだ、多くの魚がベトナムから輸入されていますから」ファームのふ化装置の中で、卵からふ化したばかりの仔魚が踊るように泳でいました。
「一回の産卵で生まれる仔魚は80万匹ぐらい。このうち稚魚になるのは15万から30万匹です」。原さんのファームでは、これを9、10センチに育ててから1匹55リエル(約1.7円)で出荷しています。もっと安く売るライバルのベトナム人種苗ファームもありますが、原さんは、「うちの稚魚は、早く、大きく育つという評判が広がり、少しずつ固定客が増えています」と自信を見せます。
原さんが、最初に青年海外協力隊の水産養殖隊員としてフィリピンに行ってから40年余り。カタールやトルコでも養殖の技術指導をしました。「趣味は魚」という原さんはこれからも夢を追い続けます。「そうですねえ、人生は長いですから。あと10年ぐらいで何とかなればいいですねえ」
【編集 : MM】
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