【インドネシア】なぜ! 中国の高速鉄道を導入決定ー評価されにくい日本の新幹線
Global News Asia / 2015年10月6日 6時48分
2015年10月6日、白紙から一転して、中国の高速鉄道提案を採用したインドネシア。担当大臣は政府が事業主体になる事を白紙にしただけで、高速鉄道導入を白紙にしたわけではなかったと苦しい言い訳をしているが、日本にとっては、青天の霹靂だ。アジアの鉄道に詳しい鉄道ライター、北山くにみさんに、なぜ、中国の高速鉄道が採用されてしまったのか聞いた。
「インドネシアのジャカルタ~バンドン間の高速鉄道計画は、日本と中国で受注を争っていましたが、9月29日にインドネシア政府より中国が建設することが発表され、日本の関係者に衝撃が広がっています。
現在も、日本の鉄道の技術レベルが世界でも最高峰にあるのは間違いありませんが、日本が高速鉄道のインフラやシステムを輸出する際のセールスポイントとしている“安全性”“運転時間の正確さ”“高頻度運転”などは、国際的にはストレートに評価されていないのが現状です。
欧米や日本では鉄道で大事故が発生すると、多額の補償金や慰謝料が発生するとともに、鉄道を運営する組織・機関に対する信用そのものも大きく揺らぎます。ところが、新興国ではまだまだ“命の値段”が軽いのが現状です。事故の死亡者に対する賠償金は日本人の感覚では考えられないほど安いのです。そのため、(仮に事故率が上昇する可能性があっても)安全対策はほどほどにして、安価に建設・運営できるものが望まれるという傾向が強いのです。
また、新幹線は高度な運行管理システムや信号保安システム、優れた運転士育成システムの導入などにより、世界の高速鉄道の中でも例を見ない時間の正確さを誇っています。ところが、日本以外のすべての国において鉄道が遅れるということはきわめて日常的なことで、仮に15分程度遅れたとしても鉄道を運営する側も利用者もそれを遅れとはみなさないのが一般的です。つまり、新幹線のように運転時間の正確な鉄道を求める国は日本以外にはないのです。
高頻度運転についても同様です。海外の高速鉄道では日本の新幹線のように数分おきの高頻度運転が必要となる路線・区間がほとんど存在しないのが現状なのです。
そのため、新幹線並の正確な運転時分の確保や、高頻度運転を実施することを目的としたシステムやインフラの導入は、海外ではどうしても過剰投資と考えられてしまいがちなのです。
今回、日本が中国にインドネシア高速鉄道で受注競争に敗れたのは、外資に依存して建設したいインドネシアと、インフラ輸出の実績作りを進めたい中国との利害が一致したことによるとの見方が一般的です。ですが、インドネシアが最終的に中国案を採用したのは、日本側の提案=新幹線システムの優越性に対するアピールが、今ひとつインドネシア側に響いていなかったからではないでしょうか。
今後、世界では高速鉄道の需要が拡大していくのは間違いありません。日本の新幹線システムの輸出を実現・促進するためには、現在以上に相手国の需要にあわせた提案が不可欠となります。そのためには、安全性を大きく損なわない範囲で、相手国の望む予算範囲までコストダウンしたプランの提案も必要なのかもしれません。」
【編集 : 安麻比呂】
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