【タイ】例え不公正でも自国民を守るタイの役人
Global News Asia / 2015年11月17日 9時0分
2015年11月17日、国が、国民とその利益を守るとはどういう事なのか? 外国で暮らしていると、日本との違いを垣間見る場面に否応無く出会う。バンコクの日本人会社経営者にそんな話を聞く機会があった。
三井俊雄(仮名)さんは、バンコクで主に日本料理店への食材卸しをしている会社を経営して10年目になる。
「国民の利益を守る。この視点だけで見れば役人の言う事もわかるんです。でも、明らかに犯罪をしたのは彼らなんです」
三井氏はそう言いながら、設立後間もない頃の体験を話してくれた。
彼自身、会社経営は初めてだった事もあって、当初は最小人数のタイ人を配達用員として男性3人、事務経理の女性を1人の合計4人を雇い入れた。
2年目も終わりの頃に、取引先からの連絡で、配達員が商品を横流ししてした事が発覚。本人も認めたために、その場でクビにした。しかし数週間後、三井氏の元に労務局からの呼び出しが届いた。
指定された役所窓口に行ってみて、初めてクビにした元社員から申し立てがあり、退職保証金を請求されている事がわかった。
クビにした経緯を詳細に説明し、会社に非がないと言う三井氏に向って、タイ人の役人が発した言葉は、
「仰る通り、この元社員が悪いとわたし個人は思います。しかし、彼らの利益を守るのが役人としての仕事です。どうか、話し合ってもらって、彼が納得する金額を払ってあげて下さい」
その言葉に、役所を巻き込んで事を構えても、良い事はなさそうだと思った三井氏は、不承不承にも納得せざる得なかった。
同じ事が日本で起きたらどうなるだろう。間違いなくその社員は、業務上横領で検挙され、損害賠償を請求するのは会社の方だろう。それは、民主的法治国家として、保障されている所以だ。
しかし、国民を守るという事を最優先に考えた時、こうした矛盾があっても躊躇なく国民を優先するのが国家としての責務でもあるかも知れない。
推察だが、外国との犯人引き渡し条約がほとんど締結されないのは、日本が行っているわずかな事例なのかも知れない。
三井氏はこの体験を通して、タイでの役人やスタッフとの付き合い方がわかった気がすると言う。
「あの役人が全てとも思いませんが、大同小異でしょう。こちらに余程強力なコネでもない限りは、この国では、争ったら負けです」
外国人は、所詮居候であり、軒先を借りているだけ。一度、大家と対立すれば、どんなにこちらが正しくて、向こうが間違っていても、負けるのはこちら。彼の知人が裁判に持ち込んで争ったが、ことごとく負けた事も、この国の現実を突きつけられた。
その後は、とにかく対立を避ける事を最大限に腐心しながら、この10年間をやり繰りして来たという。さらに、タイ人自身もこうした対立を極力嫌がる傾向があるため、現在はスタッフ、取引先とも関係はすこぶる良好だとか。
三井氏の事例は、怪我の功名ともいえるのかも知れないが、本質的に国が国民を守る為に、どこまでやっているのか。外国に於いては留意すべき事である。
【執筆 : KK】
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