【タイ】バンコクの信号機は手動が多い

大きな通りでは目の届かない場所にカメラが設置されており、交通警察官はそれらの様子を見ながら信号を操作している。しかし担当者の見通しが甘いため、信号による交通渋滞は朝夕が特にひどい。(高田胤臣:撮影)

　2016年2月7日、観光名物であると皮肉られるほど交通渋滞がひどいバンコク。バンコクで暮らすタイ人によると車の台数が多いためだと言う人が大半だが、実際には車の台数は小さな要因に過ぎない。

　バンコクの渋滞悪化の原因は大きく分けて3つあり、まずひとつはドライバー個々の運転スキルとマナーの悪さがある。タイの運転免許証は簡単な筆記試験(実際はパソコンによるマーク式)と単純な実技試験で、数時間練習すれば取得できるほど簡単だ。そのため、ドライバーの運転スキルはあまり高くないうえ、交通法規を完全に理解していない者もいるなどマナーが悪い。

　次にバンコクの道路事情も渋滞の原因となっている。道路そのものの整備もしっかりされていないことと道路の構成がよくない。バンコクは大通りとそこから枝状に延びるソイという小路でできている。このソイは行き止まりが多く、抜け道が少ない。さらに大通りは一方通行になっている場合も多く、迂回しなければ行けない場所があることもまた渋滞をより悪化させている。

　そして、最大の原因と言われるのが信号機だ。バンコクの信号は対面同士を青にせず、1方向ずつ信号を変えていく。つまり、4差路の場合一度赤信号になってしまったら、3回、ほかの方向が青になるのを待たなければならない。仮に1方向が2分間だけ青になるとすると、一度赤になったら最低でも6分間は停止を余儀なくされる。

　しかも、バンコクの交差点の信号は大半が手動式となっている。各交差点にある交番のような小屋の中に信号操作盤があり、中にいる交通警察官が交差点付近に設置されたカメラの映像や窓からの目視で信号を操作している。この装置自体が1方向ずつ青にする仕様になっていた。担当警察官の判断で信号が切り替えられるので、場合によってはある方向だけ延々と赤信号のままということもある。

　手動の理由を交通警察官に訊ねたところ、タイ人は交差点の先が詰まっていても青信号を理由に交差点内に進入してしまうのでオートメーションの交差点も存在するが、すべてがそうなると交通麻痺を起こしかねないということであった。

　筆者の経験ではおよそ20年前と比べれば今の渋滞もかなり改善されており、今後、運転マナーが向上すれば、さらに環境はよくなるだろうと推測している。

【執筆 : 高田胤臣】