【ミャンマー】推進派住民が異例のデモ 立ち退き交渉大詰めのティラワ経済特区
Global News Asia / 2016年11月16日 16時30分
2016年11月11日、日本の官民挙げて開発を進めるヤンゴン郊外のティラワ経済特区(SEZ)で、推進派の住民が新開発区域「ゾーンB」の早期着工などを求めるデモ行進を行った。ティラワSEZでは先月に開発地域の拡大が決まったが、当該地区に住む一部住民が立ち退きに応じていないため着工していない。推進派の住民は、開発を進めることで正式な移転や補償が始まることや、雇用が生まれることを望んでいる。大規模開発で抗議活動を行うのは反対派が多いが、推進派がデモを行うのは異例だ。
デモには、開発地区に住んでいた住民ら約100人が参加。住民移転問題の早期決着などを求める横断幕を掲げてSEZの敷地周辺をデモ行進したほか、開発会社ミャンマー・ジャパン・ティラワ・デベロップメント(MJTD)の梁井崇史社長やミャンマー当局幹部らと会談。約140筆の署名を手渡した。会談で住民は口々に「今はまだ動いている工場が少ない。早く工場を建設して働く場を作ってほしい」などと要望。自分らが住んでいた未着工地区の開発推進を主張した。
ティラワ地区の住民移転を巡っては、2013年1月にミャンマー当局が「14日以内に立ち退くように。さもなければ収監する」と通達したため、住民感情が悪化した。これに驚いた日本側が国際慣行に沿った立ち退き交渉を行うよう求めたため、強制排除は回避された。しかし住民の関係者らによると、この通達など政府側の態度に恐怖を感じた一部住民が交渉を待たずに退去している。この退去した住民は近隣で借家暮らしをしているが、開発が進まなければ正式な移転開始後に支給される住宅や補償の手続きが進まないため、生活が困窮しているという。
ティラワSEZは、住友商事などの日本の商社や国際協力機構(JICA)が出資する一大開発プロジェクト。2015年秋に先行開発地区のゾーンA(約400ヘクタール)が開業し、ゾーンBのうちの100ヘクタールの開発も決まった。
現在、ゾーンBの住民との立ち退き交渉が大詰めだ。当局側が住民を説得して多数派工作を進める一方で、市民団体などは簡単に立ち退きに応じないよう住民に働きかけており、住民間の対立が深まっている。開発を担当するMJTDは「住民移転問題が決着しなければ着工できない」(梁井社長)との姿勢を打ち出しており、背水の陣で臨んでいる。
【執筆 : 北角裕樹】
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