【フィリピン】ドゥテルテ大統領が進める対麻薬戦争に中国の影
Global News Asia / 2016年12月24日 9時0分
2016年12月24日、中国に急接近するフィリピンのドゥテルテ大統領。大統領が進める対麻薬戦争にもまた中国の思惑が働いている。
AFPが伝えたところによれば、ドゥテルテ大統領は中国の趙鑑華、駐フィリピン大使と会談を行い、大統領の対麻薬戦争とテロ対策を支援するためとして、中国側が1440万ドル相当の銃器、武装、それに5億ドルの借款を申し出たという。
ドゥテルテ大統領が推進する対麻薬戦争では、作戦開始から半年に満たない間で6000人もの人間が容疑者として警察や自警団によって司法を介さずに殺害されており、逮捕者は万を数える。世界の人権団体を始め、国連や、フィリピンと関係の深いアメリカまでもが重大な人権侵害の疑いがあるとしてドゥテルテ大統領を非難している。その一方で中国はドゥテルテ大統領の麻薬撲滅政策を支持している。今回の支援の申し出もその一端と見られる。
実際のところは、フィリピンで蔓延する麻薬のほとんどは中国からの密輸によるものと考えられている。ロイターが伝えたフィリピン麻薬取締庁の発表によれば、2015年1月から2016年8月に麻薬関連で逮捕された外国人のうち3分の2は中国人であり、過去20年間に摘発されたほぼ全ての麻薬製造工場の運営などに中国人が関与していたという。それにも関わらず、ドゥテルテ大統領の報道官室は、麻薬密売を行っているのは中国の犯罪組織であって政府当局者ではない、として、中国を擁護する立場を明らかにしている。現在のフィリピン・ドゥテルテ大統領の中国重視の外交がより鮮明になった形だ。
こうして中国がフィリピンとの関係を強める陰には、南シナ海の覇権を確保したいという思惑が絡んでいるのかもしれない。フィリピンは中国との間で南シナ海の領有権を巡って対立しているが、中国からの経済支援を期待している一面もある。事実、ドゥテルテ大統領は南シナ海の領有権問題については一時棚上げする方針を打ち出している上、将来的には中国との提携によって南シナ海の資源を分け合う考えを持っているという。フィリピンがアメリカとの関係を悪化させ、中国への依存度を高めていくことで、中国の南シナ海での支配力が一層強まっていく恐れがある。
【執筆 : Machi Sion】
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