【ミャンマー】盲目の竪琴奏者の録音に成功 消えゆく1000曲の記録目指す井口さん
Global News Asia / 2017年5月15日 9時0分
2017年5月15日、ミャンマーで伝統音楽の記録を進めている録音技術者の井口寛さんが、目の不自由な竪琴奏者ミンラインさんの演奏の録音に成功した。ミンラインさんは、ミャンマーではドキュメンタリー映画になったこともある伝説的な竪琴奏者。ミャンマーの伝統音楽の奏者は高齢化が進んでいることから、貴重な楽曲が失われる危険性が高いとして、井口さんは3年以内に1000曲を録音することを目指している。
4月のある日、ヤンゴン郊外の音楽スタジオで、ミンライン氏はがポロンポロンと竪琴を奏で始めた。それに合わせ、年配の女性歌手がゆったりとした調子の歌を合わせる。釈迦が悟りを開くまでをなぞった歌詞だという。ある曲は緩やかで静かなメロディである一方で、リズミカルで躍動感のある曲もある。井口さんは曲を聞きながらパソコンの画面を操作して録音。音が自然にとれるように反響を弱めたり、マイクの位置を調整したりするなどして、日本水準の技術を生かしている。
ミンサインさんは字を読むことができないため、竪琴などの演奏はすべて師匠から直接ならった。曲も耳で聞いて覚えたという。ミンラインさんは「400~500曲の古典音楽を覚えている」と話す。
ミャンマーの古典音楽は、1752年から1886年までのマンダレー王朝などで発展したマハギターなどがある。こうした楽曲の多くは楽譜がなく、奏者の記憶の中で受け継がれている。ただ、伝統音楽奏者の後継者不足から永久に失われる危険性が指摘されている。井口さんと一緒にプロジェクトを進めるマウンマウンゾーテ国立芸術文化大学教授は「あと10年したら多くの楽曲を知る奏者がいなくなり、録音もできなくなる」と危機感をあらわにする。
そこで、井口さんとマウンマウンゾーテさんは2013年に音楽の保存プロジェクトを開始。これまで、竪琴のほかに、ビルマギターや打楽器のサインワインなど多様な楽器を使った曲を記録してきた。井口さんは今後も定期的にミャンマーを訪れて録音を進める計画だ。
【執筆 : 北角裕樹】
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