ラオスの不発弾処理には「あと200年」、問題に取り組むJMAS
Global News Asia / 2017年6月9日 9時0分
2017年5月27ー28日に、東京の代々木公園イベント広場で「ラオスフェスティバル」が開かれ、NPO団体や飲食店ブースも出店し、ステージではダンスやラオス歌謡曲のショーがあり、今年も賑わっていた。
認定特定非営利活動法人「日本地雷処理を支援する会(JMAS)」も出展し、ラオスの現状について多くの来場者に理解を広めるため説明した。JMASは地雷や不発弾などの問題が深刻な国において、職員である元自衛官たちが各国政府の団体と共に、不発弾処理の活動と支援を行っている。
JMASはラオスにも支部があり、同地ではラオス政府の不発弾処理機関「UXOラオ」に自衛隊固有の技術であるのこぎりカット法を指導したり、実験的にショベルカーを改造した不発弾処理機械を導入して、汚染地域で爆弾処理を実施している。
ラオス国土は世界で最も不発弾に汚染され、一般市民が不発弾の危険にさらされている。ただ、それは首都ビエンチャンやルアンパバーンなどの観光地ではなく、北部のシェンクワンやラオス南部のいくつかの県で顕著になっている。
ラオスにおける不発弾は主に隣国で発生したベトナム戦争に関係している。1964年から1973年ごろにラオス北部の一部とラオス南部に米軍によって200万トンに相当する爆撃が行われた影響である。ラオスの共産化を目的とした当時の反政府勢力の拠点が北部にあり、また南部にはラオス国内を秘密裏に通過していた北ベトナムの補給路、いわゆるホーチミンルートがあったため、米軍によって集中的に爆撃されてしまった。
投下された爆弾には数百発の子爆弾を抱えて広範囲を攻撃するクラスター爆弾が多く、統計的にこれらの3割が不発弾となっている。また、その子爆弾は特殊な形状なので子どもたちが興味本位で拾って暴発したり、農夫が開墾する際にクワで地中に隠れていた不発弾を叩くことで炸裂。結果、民間人に今でも死亡者が出ている。1964年から2008年の不発弾による死傷者は計5万人にも及ぶ。2000年から2011年だけでも死者が約2600人。年間200人以上もの市民が亡くなっている計算になる。
現在も国土の3分の1以上が不発弾に汚染されているとされ、1996年にラオス政府が「UXOラオ」を創設して処理を始めたが、20年以上が経った現在もいまだ全体の1%程度しか処理は進んでいないとされる。投下地点は山林が多く、機械を導入できないからだ。このペースではラオスの完全安全化までにあと200年はかかるとされる。現在JMASが導入し始めているコマツ製の不発弾処理専用ショベルカーの稼働率が上がれば、ラオスの社会問題解決に大きく貢献することになる。
投下の当事者アメリカは2016年9月に、現役米国大統領として初めて当時のオバマ大統領がラオスを訪問し、大量の不発弾の処理にかかる費用を支援することを表明。向こう3年間に渡り約9000万ドル、日本円にして90億円におよぶ支援を約束している。
不発弾の汚染度合いが激しいラオスでは企業などが新規に土地利用する際には安全確認を義務づけている。土地開発には費用と時間がかかるため、ラオス経済が成長しない原因のひとつで早急な解決が必須となる。アメリカの支援、JMASの活動はラオスの成長にとって要となることが間違いない。
自衛隊のOBたちで構成されたJMASはそんなラオスの不発弾処理の最前線で活躍しラオスの社会問題に取り組んでいる。
【執筆 : 高田胤臣】
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