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『新幹線を通してみえる中国経済のダイナミズム』ジャーナリスト 信太謙三

Global News Asia / 2017年9月28日 9時15分

中国新幹線の「和諧号」

 2017年9月28日、「天孫降臨 日本縄文書紀」の著者で、ジャーナリストの信太謙三(しだ・けんぞう)氏に「新幹線を通してみえる中国経済のダイナミズム」をレポートしてもらった。

◆中国新幹線の営業距離は2万キロを突破

 中国の新幹線(中国では「高速鉄道」)については悪評も少なくない。2011年7月23日に温州市近郊で起きた新幹線の追突事故では、中国政府発表で、40人が死亡しており、安全面が問題視された。また、新幹線の輸出では、インドネシアで日本に競り勝ったものの、資金面の手当てや用地買収などで、工事が遅れに遅れており、目標の2019年開業は今や絶望的だ。さらに、米国やベネズエラへの新幹線輸出計画はとん挫。メキシコでは、贈収賄が暴露されて、中国新幹線の導入計画がストップしてしまった。しかし、である。こうした挫折を乗り越えて進んでいく中国経済のダイナミズムを決して過小評価してはならない。

 中国新幹線の営業距離は昨年9月10日の鄭州―徐州路線の開通で2万キロを突破したとされ、中国東北部の長春と中朝国境に近い延吉(延辺朝鮮族自治州)とを結ぶ新幹線は1日に、何と、上り、下りがそれぞれ27本もある。また、新疆ウイグル自治区のウルムチと甘粛省の蘭州の間も既に新幹線が走っており、新幹線はウルムチからさらに西のシルクロードの街、哈密(ハミ)に到達した。因みに、日本の新幹線の営業距離は約3000キロ。レールの幅が狭軌で始まり、標準軌にかえて新幹線を走らせた日本に比べ、在来線がもともと標準軌で、それを利用しながら新幹線を導入できた中国は有利だったとはいえ、中国新幹線の普及は驚くべきスピードで進んでいる。

◆時速307キロで大陸を疾走する中国新幹線

 昨年の北京-上海間に続き、今年は北京―西安の新幹線に乗ってみた。 9月21日午前6時53分、北京西駅を出発。どこまでも続きそうな平原を走り続け、午前11時24分、西安北駅に到着した。北京―西安間の距離は1212キロ。途中、石家庄と鄭州東駅に停車し、所要時間は4時間31分。音も静かで、揺れも少なく、中国のテレビでみたように、1元のコインを窓際の平らな部分に立ててみたが、1分以上、そのまま立っていた。料金は普通が515・5元(約8700円)、1等が824・5元(約1万3900円)。ほぼ満席。1等車でもカップヌードルを食べる客がおり、新幹線の車両の中には、そのための給湯器が備えられていた。中国では、新幹線だからといって、特別ではない。速度計をみると、時速307キロ。東海道新幹線より速い。勿論、中国の新幹線は、日本のように細部にわたって美しく仕上げられてはいない。が、大量の車両を次々に生産して走らせる中で、安全や安定、防音や断熱などの技術を着々と向上させていっている。しかも、中国政府は「新幹線は中国の(対外的な)新たな名刺である」とし、新幹線の輸出に全力を注いでいる。日本の新幹線技術は、確かに、世界の最先端をいくものだが、うかうかしてはいられない。

【信太謙三 (しだ けんぞう)】氏は、時事通信社で北京と上海の支局長を務めたジャーナリスト。東洋大学で10年間教鞭をとった。日本の国際化を、映画のように解き明かす書籍「天孫降臨 日本縄文書紀」花伝社刊(1500円+税)を発売。「日本という国がいったいどういう国で、日本人がどういう民族なのか、この物語を楽しみつつ、考えてもらえばありがたい」と語っている。
【執筆 : AO】

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