【ミャンマー】ラカイン問題テーマの作品が受賞、ワッタン映画祭がタブーに一石
Global News Asia / 2018年9月16日 9時15分
2018年9月11日、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで開かれていたワッタン映画祭で、ラカイン州情勢を取り上げた短編映画「サイレンス・イン・ミャウー」が最優秀短編映画賞を受賞した。社会問題に関する作品を多く取り上げることで知られるワッタン映画祭が、ミャンマー社会のタブーに切り込んだ形だ。
最優秀短編映画賞を獲得したのは、ティンチョウテイ監督がミャンマーのラカイン州の古都ミャウーを舞台に撮った作品。2018年1月の仏教徒ラカイン族と警察当局との衝突で7人が死亡した事件をテーマにしたフィクションだ。
ラカイン州では、イスラム系武装組織の襲撃事件に端を発したミャンマー国軍の掃討作戦でイスラム系住民のロヒンギャら約70万人が隣接するバングラデシュなどに脱出。また、18世紀まで独立王国を持っていたラカイン族も民族主義的傾向を強めるなど緊迫した情勢が続いている。大きく分けると、ミャンマーの法律では国民とは認められず各種の権利が制限されているロヒンギャ、増加するイスラム教徒に危機感を感じ独立志向を強めるラカイン族、ミャンマー最大の民族でラカイン族の同化政策を進めてきたビルマ族の3勢力が複雑に対立する構図となっている。この作品では、こうした問題を背景に起きた事件に目を背けるミャウーの住民の姿を通し、ミャンマーの抱える少数民族問題をあぶりだした。
一方で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したのは、チェリー・ティン監督の「マザーズ・バーダン」。ミャンマーのバガン地域のシングルマザーが、地方の因習にとらわれて苦しみながら生きる様子を描いた。また、青年の恋心を描いたマウンボン監督の「ボイド」は奨励賞を受賞した。コンペティション部門には今年、57作品が応募し、11作品がノミネートしていた。
表現の自由が十分に保障されているとはいえないミャンマーで、国内最大の規模を誇るワッタン映画祭は、独立系映画製作者らに自由な表現の場を提供してきたことで知られる。昨年にも、検閲によって上映できなかった同性愛がテーマの作品に最優秀ドキュメンタリー賞を授与し、政府に対して強い問題提起を行っている。
【取材/執筆 : 茂野新太・北角裕樹】
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