逃亡者にも人気「人生に疲れたらフィリピン!」心身ともに緩む近場の常夏
Global News Asia / 2018年10月29日 9時15分
2018年10月29日、東京から飛行機で5時間程度。常夏のフィリピンはいつでもあたたかい。
東京。私たちは毎日肩をすくめながら満員電車に揺られ、数分の電車遅延や小さな不調和にも寛容さを失いつつある日本社会からの細かな要求に、日々精一杯応えている。電車の中で、組織の中で、家族の中で疲弊する我々は、電車の中吊り広告にまぶしく描かれる青い海と白い砂浜を、今日も夢見るだけだ。
フィリピン。常夏と言っても近年の日本を襲う酷暑とは違い、25度から30度強の程よい熱気と島嶼国ならではの海風で心地よい暑さだ。大阪からだと4時間強で行けてしまうフィリピンへは、LCCも含め日に何本も飛行機が飛ぶ。首都マニラのほか、ミンダナオ島やセブ島と日本を直接結ぶ便も増えた。フィリピンと聞いて思い浮かべる青い海と白い砂浜、ヤシの木やサンゴ礁といった南国イメージは裏切られることなく、むしろ想像を遙かに超える美しさだ。しかしフィリピンの美しさは、自然環境のみにあるのではない。我々日本人を最も魅了する観光インフラは、底抜けに明るい人々の笑顔だ。
2017年のフィリピンの一人あたりGDPは約3,000USドルで、日本円に月収換算すると30,000円を切る。21世紀に入ってからは経済成長が続くと言えど、人々の多くは貧しく質素に暮らす。地方での暮らしは、一つの水道を数世帯で共有し、拾ってきた木の枝を燃料に煮炊きをする。冷蔵庫や洗濯機を見かけるのも稀で、扇風機があればいい方だ。にも関わらず、人々は明るく陽気。自殺率は183か国中162位と極めて低い(ちなみに日本は18位)。
彼らは経済的な不足を歌と踊りでやりすごし、家族の強い絆を靭帯とし助け合いながら生きている。上の子が下の子の学費を支援するなど、今の日本では希少な美談だが、フィリピンでは珍しくない話だ。年老いた親の面倒も、家族親戚一同でかわるがわるみている。思えば日本人も、ひと昔前はこのようなつながりの中で生きていたのではないだろうか。
問題を問題ともせず、日々是好日とばかりに毎日を生きる彼らはとにかく明るくよく笑う。ルーズだという言い方もできるが、そんな彼らの懐の深さがこわばった顔をふっと緩ませる。彼らと歌い踊っていると、人生そんなに悪くないなと思えてくるから不思議だ。そのままの自分でいることを許してくれる島々で、誰の視線も気にすることなく過ごす時間は、こわばった心を柔らかくほぐしてくれる。
ただあるがままを受け容れてもらいたいという人間の根源的な欲求を満たしてくれるデスティネーションは、そう多くない。満員電車の中で見ているだけの広告の中の美しい島々は、少し手を伸ばせば届くところにある。日本はこれから寒さが増す季節だが、常夏のフィリピンはいつでもあたたかい。
【編集 : 山田愛】
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