南シナ海問題で、明治大学 伊藤 剛 教授に話を聞くー国営ベトナム通信
Global News Asia / 2019年8月4日 14時45分
2019年8月2日、領有権・排他的経済水域・航行の自由など「南シナ海問題」をめぐる対中姿勢は複雑化していて分かりにくい。国営ベトナム通信の記者が「ASEANと海洋問題」に詳しい、明治大学 伊藤 剛 教授に話を聞いた。
Q:中国がベトナムのEEZに侵入したことについて、どう考えますか。
A:伊藤剛氏 まず大きな問題は中国が主張する排他的経済水域の範囲です。範囲の主張の仕方がベトナムに対して主張する論拠と、たとえば日本に対して主張する論拠が、全く異なる事です。
これがどういう意味かというと、日本と中国の間にも同じように排他的経済水域に関する論争があります。その時に中国が主張したのは大陸棚の話なのです。ところが、ベトナムとの間の論争のときに中国の主張は大陸棚ではなく中間線なのです。
つまり、国際法にのっとってるというのであれば本来主張は一貫していないといけないはずなのに、それが国によって論拠が違うというのはかなりご都合主義、自分たちの都合に合わせて考えているとしか思えない、というのが一点目です。
二点目はすでに南シナ海の件に関して、今から三年前の2016年7月12日の国際仲裁裁判所で判決が出ています。つまり南シナ海が当事国、それから領域当事国ではないにしても南シナ海を通過する、或いは使用している国は数多く存在しているので、そういった国々が平等かつ有効的に南シナ海の航路が使えることを考えると、既に2016年PCAの判決で「九断線というのは何も法的根拠がない」という判決が出ています。その判決に対して遵守していないという点で大きな問題になっています。
もう一つの大きな問題は、法的にPCAの中でもちろん中国はその判決は気に入らないでしょうが、それを国際法の枠組みの中で反論するのであれば、きちんと論争すればまだ良かったのです。ところが、国際法の判決が気に入らないから直接行動を起こすというのは本来全く関係のないところで、自分たちの不満をぶつけているわけであります。
日本には江戸の仇を長崎で討つという表現がありまして、江戸(東京)で生じた恨みを全く違うところで発散させるということわざがありますが、中国も同じような状態になっています。国際法の中で出た判決であれば国際法の中で戦えばいいものを、そうではなく全く違うところで不満を爆発させるのは全く筋違いな話だというふうに考えます。(続く)
伊藤剛氏は、国際交流基金アジアセンターの2016年度フェローシッププログラムに選ばれて「ASEANと海洋問題」について調査・研究した実績のある学者。
【編集 : KH】
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