新たな「常態」に回帰するインド経済<HSBC投信レポート>
Global News Asia / 2020年7月9日 6時45分
2020年7月8日、HSBC投信は、「新たな「常態」に回帰するインド経済」と題するレポートを発信した。
<レポート>インドでは、人の移動を示すデータや各種経済指標は、経済活動が概ね4月に底を打ったことを示している。5月から6月にかけては、景気回復の勢いが増す傾向が見られる。全土封鎖(ロックダウン)の段階的解除や生産活動の再開がインド経済にとって明るい兆候であることは確かだが、他方で新型コロナウイルスの影響による失業への不安や消費者のリスク回避志向は強く、先行きの景気の回復ペースについてはなお懸念が見られる。
政府は3月24日に全土封鎖措置を発表したが、感染拡大を阻止することはできなかった。しかし、PCR検査体制の拡充と感染からの回復率の高さを反映し、インドの死亡率は世界平均を大きく下回る3.2%にとどまっている。こうした状況下、政府は6月初めに感染者が少ない地区からロックダウンの段階的解除に踏み切った。
インドでは、厳しい感染拡大防止策が実施されたため、4月の経済指標では景気の落ち込みが他のアジア諸国と比較して極めて大きいことが示された。しかし、最近の経済指標の中では、電力需要、自動車販売台数、鉄道貨物輸送量、政府の雇用創出プログラムにおける新規雇用者数、物品・サービス税(GST)コンプライアンス・データなどがいずれも4月に底を打ち、その後上昇に転じている。
投資家は、経済指標が急速に改善した理由は全土封鎖で抑制されていた消費需要が一気に噴出したためだと判断し、より持続的な成長要因を見極めようとしている。
短期的な景気見通しを左右する要因は複数ある。新型コロナウイルス感染症に伴う「恐怖要因」としては、 消費の減退、数百万人に上る出稼ぎ労働者の地方への帰省による都市部における人手不足、金融システムの一部における信用収縮の長期化、他の主要国と比べて見劣りする緊急の財政出動などがある。
一方で、明るい要因には、感染拡大後も底堅さが見られる農村経済、インフォーマル・セクター(非公式部門)のフォーマル(公式)化と経済のデジタル化の加速(いずれも長期的なポジティブ要因)、労働改革、土地改革を含む政府の構造改革(製造業振興策「Make in India」プログラムを加速する効果が見込まれる)などがある。
エコノミストの大半は、インドの国内総生産(GDP)成長率が2020年度(2020年4月-2021年3月)には実質でマイナスになると予測している。その理由が、国内経済の予想以上の低迷と世界経済の停滞であることは言うまでもない。ただし、2021年度の成長率は、前年度の大きな落ち込みの反動もあり、力強い回復が予想される。
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