【タイ】民主化への理想と現実、難しい着地点(タイ在住ライターが見た現実)
Global News Asia / 2020年10月25日 16時15分
集会を禁止した非常事態令が解除されると王党派も表立った行動を開始している。しかし、中には、強制的にかき集められた市民や軍や警察関係者が市民に扮して参加している姿が見られたり、日当目当てに参加しているという実態がSNSに投稿され「本当は1,000バーツなのにピンハネされて500バーツしかもらえなかった」などと言った投稿もなされている。
かつてタクシン元首相を追放したクーデター以降、黄シャツ(守旧派)と赤シャツ(タクシン派)による対立が長く続いていたタイは、今でも基本的な対立構造に大きな変わりない。今回の反政府デモでは、学生たちの資金源には旧赤シャツ派やタクシン元首相などの関与や、米国による支援などが噂されている。
現政権の苦悩
現政権の退場と民主憲法の復活。そして、行き過ぎた国王による資産管理について、王室財産管理局に戻すことが反政府側の求める王室改革だ。しかし、政権側も絶対的な国王の前にあって、安易に要求に応じられないのが、いわゆる大人の事情となっている。かつてプミポン元国王が存命だった時代には、仲裁に入って解決をしたのだが現国王にはその意向は見受けられない。だが、その一方でSNSなどでの王室批判を許容している点や不敬罪の適応を控えるよう指示しているとされる点。そして、いくつかの批判的なメディアに対してのアカウント凍結を裁判所が却下したことも注目に値する動きと言える。
バンコク都心の商業地区で行われたデモに対して、放水車を用いた強制排除をきっかけに反対勢力への賛同が増加したことで、政府側は力による排除を控えている節がある。反政府側も集会場所を直前まで公表しないことで、無用な衝突を避けようという配慮も見られる。
世代交代としての民主化要求
総じて言えることは、民主主義の理想への変革を求める若者たちだがタイという国家への誇りと忠誠心は捨てていない。むしろ誇りと忠誠心を守りたい、あるいは愛すべき国家、王室であって欲しいが故に今回のデモに至っていると言えるだろう。現国王は先日「国王を愛する国民が必要だ。」と語ったていたが、これにはそもそも論として国民に愛される国王となるのが先決だという反政府側の言い分が正しいだろう。少なくともドイツなどでの奇行をパパラッチされるような王様をそのまま愛せるほど今や国民は盲目ではないのだから。
問題は現政権が、不正を正したいという子ども達の訴えを、大人として対面や自己保身ばかりを気にして応じないこと。間違ったことをしてはいけないと教えてきた大人に対して、子ども達が大人自身が間違っている点を指摘しているという構図でもある。これは言い換えれば、理想を追い求める若者と変化を嫌う大人という人類が古来から繰り返してきた世代交代の時に起こる揉め事でもある。
【執筆 : BB】
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