【インド】テーパー・タントラムの再燃? しかし現在の状況は当時と異なるーHSBC投信
Global News Asia / 2021年4月14日 6時0分
また、インドの外貨準備高は2020年に大幅に伸びて過去最高を記録し、2013年のテーパー・タントラムの前後数年を大きく超え、外国為替ショックに対する緩衝材もそれだけ強化されている。また、インド国債の外国人保有率は依然として低いが、2020年にはコロナ要因で外国勢のインド国債保有が減少しており、2021年にはその分、外国勢の売りが和らぐものと考えられる。因みに、インド国債は米国債と比べ依然として高い利回りを維持している。
マイナス面としては、インドの財政赤字は現在、2013年のテーパー・タントラムの当時をはるかに超える規模に膨らんでいる。政府が大規模借入計画を打ち出したため、インド国債市場ではインド準備銀行(中央銀行)による下支えが欠かせなくなっている。しかし、中央銀行は流動性管理ツール(例えばより積極的に公開市場操作で流動性を供給するなど)を備えているものの、米国債の名目/実質利回りが上昇し、インフレ懸念が高まる状況下では、難しい舵取りを迫られることが考えられる。金融および財政政策はすでに超緩和
的なものとなっており、ターム・プレミアム(期間による上乗せ金利)が歪んだ水準にあるため、僅かな資本流出やリスクセンチメントの変化であっても、新興国の債券市場は大きく変動しかねない。当社では、中央銀行による流動性の過剰供給や債券市場への過度な介入は、特に市場の変動が激しくなれば、何らかの制約を受けると見ている。インフレ・リスクは今のところ管理可能だが、上振れリスクあり。
3月末、政府は中央銀行と今後5年間のインフレ目標レンジを2%~6%で維持することで合意した。合意前には、成長を優先する政府の意向を反映して目標が緩和されるという観測が流れていた。総合インフレ率は2020年に一時高水準で推移していたが、12月以降は中銀目標レンジの範囲内に落ち着いてきた。
しかし、当社では、インフレ率は2021年度のほぼ全期間を通して中銀目標中央値の4%より高い水準で推移すると予想している。短期的には、世界的な原油や商品価格の上昇、広範囲にわたる国内需要回復、一部の製品については企業の価格転嫁によるコスト・プッシュ圧力から、インフレ率の上振れリスクは高まっている。また、インドの関税率の高さも関連製品の供給面でのインフレ圧力となるほか、食料価格の変動にも引き続き注意が必要である。コア・インフレ率はずっと高い水準で推移している。衣類・履物、家庭用品・サービス、ヘルスケアなどの部門では、店舗での業務が正常化するにつれ、インフレ圧力が顕在化しつつある。
しかし、マイナスの需給ギャップが潜在的な需要圧力を抑制している現状を勘案すると、中央銀行にとって短期的に優先すべき政策はインフレ対策とはならないことも考えられる。
【編集 : LJ】
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