【コラム】そして華道は、日本海を渡ったー韓国
Global News Asia / 2022年1月4日 6時0分
1967年一人の日本人花嫁が、韓国に渡った。大学を卒業して航空会社に勤めていた。夫になる韓国人は、アメリカに留学中で、文通で愛を育んだ。それでも、彼女の中に朝鮮人に対する本能的な差別心はあった。けれど、彼女は当時の日本では適齢期を過ぎた29歳。30歳になる前になんとか結婚したいという気持ちも同時にあった。29歳のうちに結婚した。
世の中は東京オリンピックで浮かれていた。日韓国交正常化があり、3年後、ソウル支店勤務を言い渡される。夫が朝鮮人(韓国人)だったのも大きく作用しただろう。
37歳の時に、転機があった。彼女が活けた日本の生け花を見た、近所の女性たちに「教えてください」と乞われたのだ。しかし、華道に必要な剣山も花ばさみも簡単に手には入らない。彼女は、自分の道具を韓国の鋳物業者に託して、似たようなものを作ってもらった。日本の「道」とつく華道、茶道、書道は、ある意味形から入る。そこら辺にあるもので代用しては「お教室」を開くことは、師範のお免状がある彼女にはできなかった。
国交が正常化したとて、当時の韓国もまた、日本人が抱く差別心と同じような、反日感情は強かった。彼女は日本人とはばれない様に、無口な先生として、そして一人の韓国人として、教室を開いた。おそらく生徒たちにはバレていただろうに。最初は自宅で開いていたが、生徒は増えに増えて、デパートの一室を借り受けないと教えられないようになった。その数100人。時代背景に従って、日本に対する感情には波があったという。
それでも、生け花の他に、日本語も教えてくれという生徒も出てきて、日本語教育の教壇にも立った。生まれは日本人だけど、韓国人として韓国に骨をうずめる覚悟をしたからだ。彼女が韓国に根差して生きる女性になった代わりに、2人の娘は、今、日本で医師として活躍している。韓国籍の医者は一定数いて、社会的地位も高い。夫が亡くなっても、娘たちを追いかけることなく、華道教授として彼女は韓国にいる。「道」の世界は、師弟の間柄が強固だからだ。
彼女が先鞭を切った華道は、韓国に根付いた。押しも押されぬ大先生に彼女はなっている。展示会では、チマチョゴリを着て客をもてなす。「韓国と日本が仲良しになって欲しい」。それが、今年88歳になる彼女の願いだ。もう、日本人ではなく、韓国のハルモニなのだ。華道という一つの道を究めた時、そこに国籍は関係ないのかもしれない。
ただ…華道は「韓国が発祥」という言葉が飛び出さなければいいのだが…。
【編集 : fa】
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