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【新書紹介】信太謙三 著 『新出雲国風土記―山犬伝説』

Global News Asia / 2022年2月4日 8時0分

『新出雲国風土記―山犬伝説』(信太謙三著、花伝社)1,980円(税込み) 発売日 ‎2022年1月25日

 日本の古代史が次々と書き換えられている。稲作は少し前まで弥生時代の初め、紀元4~5世紀に始まったとされてきた。が、実際には、縄文時代晩期(3200年前 ~ 2400年前)にまで遡ることが分かってきた。土器に付着したコメ汁の年代を最新の科学技術で測定したところ、それが何と3000年ほど前のものだったからだ。また、遺跡の発掘調査でイネのプラントオパールが地層から大量に見付かり、稲作がそれよりもさらに古い縄文時代後期(4400年前~3200年前)に始まっていた可能性も指摘されている。

 古代の遺跡から発掘された人骨やコメのDNA検査によって、日本人のルーツや稲作伝来のルートなどの研究が進み、従来とは違う見解も生まれている。日本最古の歴史書『古事記』、日本初の国史『日本書紀』、奈良時代の地誌『風土記』の研究では、『日本書紀』が藤原一族の権力維持ために藤原不比等によって意図的に編まれたもので、虚構に満ち、聖徳太子は存在せず、中国・隋の皇帝煬帝の派遣した使者(裴世清)が会った「倭王」とは女性の推古天皇ではなく、蘇我馬子であり、蘇我王権が存在していたとする説もでてきている。さらに、出雲の荒神谷遺跡で358振りもの銅剣が発掘されたことなどから、天皇家につながる大和王権が奈良盆地を中心に成立する以前に日本には強大な出雲王権が存在していたと考える研究者も増えてきた。

 本著はこの出雲王権存在説に基づいて書かれており、明治期に絶滅したニホンオオカミ、いわゆる山犬に愛された主人公ナムチが、さまざまな試練を経て、倭人と渡来人の力を結集、大出雲国を創設する壮大な物語。自然と共存しながら生きてきた古代日本人の心を描き、巨大魚、黄泉の国、いわゆる“死の世界”も登場。読者を飽きさせないエンタメ小説になっている。作者は時事通信社で北京支局長、上海支局長などを歴任。1996年度のボーン・上田記念国際記者賞を受賞した。元東洋大学教授。前作の「天孫降臨――日本縄文書紀」(花伝社)とあわせて一読をお勧めしたい。
【編集 : ジャーナリスト・井上雄介】

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